クラシック、オペラの粋を極める!

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2012/1/28 都響

2012年1月28日  東京都交響楽団プロムナードコンサート   サントリーホール
指揮  山田和樹
マティアス・ヘフス(トランペット)
チャイコフスキー  歌劇エフゲニー・オネーギンよりポロネーズ
アルチュニアン  トランペット協奏曲
 
 
 この日、どうもいつものコンサート会場にいるようなお客さんとは違う雰囲気の若い人たちが結構いた。彼らのお目当ては、ズバリ、トランペット協奏曲。そう、部活や市民吹奏楽団などで自ら楽器を手にして演奏しているアマチュア演奏家たちである。私も中学・高校時代はトランペット小僧だったから、彼らが醸し出した匂いはすぐに嗅ぎ分けられた。
 
 アルチュニアンという作曲家の名前は、よっぽどのマニアでない限り、普通のクラシックファンは知らない。だが、トランペット奏者にとって、その名を知らない者はいない。古今東西、トランペットの三大協奏曲と言えば、ハイドン、フンメル、そしてアルチュニアンなのである。(もっとも、そもそもトランペット協奏曲の作品自体が非常に少ないのであるが。)
 
 マイナーな曲ゆえ、コンサートの実演に接する機会は自ずと限られるため、そういう稀少な機会の折には普段コンサートに行かないようなトランペット小僧がここぞとばかりに集結するというわけだ。
 
 何を隠そう、この私のお目当てもアルチュニアン。若手の注目株・和樹クンではありません。この曲がプログラムになかったら、きっと行かなかったと思う。安い裏側のP席じゃなくて、ラッパの向きを考慮してちゃんと正面席を買ったし。
 
 アルチュニアン・・・ああ、懐かしい。高校生くらいの時、よく練習したっけなあ。私は特別上手くはなかったけど、小学生時代からかれこれ6年も7年も吹いているとある程度上達し、こうしたコンチェルトの演奏に憧れ、つい背伸びして吹いていたわけだ。もちろん、技術的に演奏が難しい箇所はあって、吹けるところだけ吹いて自己満足に耽っていた。
 ビックリしたのは、もう20年以上も楽器の演奏をご無沙汰しているのにもかかわらず、自然と旋律に合わせて指が動きそうになることだ。脳裏に眠っていた青春の覚醒。忘れないんだねー、やっぱり。いいね、青春って(笑)。
 
 この日演奏したマティアス・ヘフスは、ハンブルグ州立歌劇場管弦楽団の首席奏者を経て、現在はフリー奏者として活躍しているとのこと。事前に噂で聞こえてきた「かなり上手い」の評判通り、高度で安定したテクニックを駆使し、素晴らしい音色で観客を魅了。私も思わず「すごい!さすが!」と唸ってしまった。この日集まった小僧諸君、参考になったかい?テクニックをうまく掴むことが出来たかな??
 
 さて、忘れちゃいけないもう一人の注目、若き俊英山田和樹。わたくし初めて見ました聴きました。この人、音楽専門雑誌や評論家などの評論で、やたらと評判が良い。どうやら前途洋々らしいのである。小澤征爾からもお墨付きをもらっているという話だし、1979年生まれの若さで既に国際的に活躍中で、来シーズンは名門スイス・ロマンド管弦楽団の首席客演指揮者に就任だってさ。これはたいしたもんだ。
 
 この日のメイン、ラフマニノフはその彼の本領が発揮されて、なるほどと納得。若い指揮者は腕がよく動く一方で、往々にしてブンブン振った挙句空回りすることが多いのだが、彼の場合、力みが抜けているので、音作りに余裕が感じられる。振った分だけの音が余すところなくストレートに客席に伝わってくる。引く所と押す所、流す所とためる所、そのへんの振り分けも実に巧みであった。
 
 都響奏者の皆さんがこれがまた実に優しい。いかにも若手指揮者を盛り立てようとして、一生懸命に尽くしているのが、誠に微笑ましい。
 
 それにしても、自分よりもはるかに年下の指揮者が台頭し活躍する時代に突入したのだねえ。なんとまあ、やれやれという感じだ。いつかやがて、自分の子供や孫の世代の指揮者が登場する時代がやってくる。そうやって、年を取っていくんですね~(笑)。