クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2011/12/31 フランクフルト

 12月30日ウィーン、12月31日バーデン・バーデン、1月1日ロンドン。この一連の移動をどうするかが、事前の旅行計画段階でクリアすべき課題だった。
 特に、ロンドンでのロイヤル・オペラ・ハウスのマイスタージンガーは、開演が午後3時。余裕を持って劇場入りするためには、遅くとも正午くらいまでにはロンドン入りしておきたい。だが、国際空港がないドイツのバーデン・バーデンから、どうやって午前中にロンドンに移動できるのか・・・。
 
 知恵を絞った挙句、私が下した結論は、「31日の宿泊拠点をフランクフルトにする」というものだった。ウィーンからフランクフルトまで飛行機で飛び、まずフランクフルト市内のホテルにチェックインする。ホテルに荷物を降ろし、身軽となって、バーデン・バーデンまで電車で移動。同地でのジルベスターコンサート終演後、再び電車でフランクフルトに戻って宿泊。そして翌日の午前の飛行機でロンドンに飛ぶ。これは我ながら、ナイスな解決策だったと思う。
 
 もう一つ、どうしようかと思案していたことがあった。
 上記に比べれば全然大したことないのだが、フランクフルト入り(午前9時半)してからバーデン・バーデン行きの電車出発(午後2時半)までの約5時間を、いったい何をして過ごそうか、という問題。
 「観光すればいいじゃないか」って?いやいや、それがですねー、そう単純ではないんです。
 旅行ガイドブックを調べてご覧なさいな。12月31日は、観光できそうなポイントは、軒並み「休業休館」なのです。そうなると、出来ることといったら「お散歩」くらいしかないわけである。
 
 仕方がない。「お散歩結構、いいだろう。それでいこう。旧市街やライン川沿いなどをのんびり歩いてみよう。疲れたらカフェで休んだり、そのまま昼食休憩に突入してしまえばいい。」なんて考えていた・・・。
 
 その12月31日。
 ウィーンからフランクフルトに到着すると、雨がしとしと降っていた。空は分厚い雲に覆われ、暗くて、晴れそうな感じはしない。そして、何よりも寒い。とてもお散歩なんて気分になれなかった。
 
 とりあえず、宿泊ホテルに行ってみた。午前10時だったが、部屋は空いていて、もうチェックインが可能だった。
 
 はい、決定~。観光中止。ホテルでのんびり過ごす。室内にはドイツの3つ星クラスにしては珍しく、湯沸しポット、ティーカップ、紅茶やインスタントコーヒーなどが備わっていたので、ありがたく頂戴した。
 
 
 さて、この後、予定どおりバーデン・バーデンに移動してジルベスターコンサートを聴いたのだが、鑑賞記は次回ということにして、以下、「大晦日、ドイツの新年の迎え方」について御紹介しようと思う。
 といっても、分別のある大人たちの過ごし方ではない。おもに、「ハッピーニューイヤー!」ということでここぞとばかりに騒ぎたい、はしゃぎたい若者連中の習慣である。
 
 ボルテージが最高潮となる午前0時の瞬間に向けて、ドイツの若者は友人らと広場や溜まり場に続々と集結する。そして新年の時と合わせて、彼らは一斉に花火をボンボンと打ち上げながら、盛大に祝うのだ。
 
 楽しそうでいいじゃないかって?? うんにゃ、とんでもない!!
 はっきり言おう。怖い。危ない。
 何が怖いって、すぐ足元で爆竹がけたたましく炸裂するのだ。ロケット花火が飛び交うのだが、まっすぐ上だけでなく、ヘタすると横っ飛びでも飛んでくる。自分の足元や目の前で、不意に花火や爆竹がドカンと鳴った時の恐怖。危険極まりないったらありゃしない。ここは自爆テロ現場か!?どうしてけが人が出ないのだ??いや、きっとドイツの国内のどこかで、この日この瞬間、少なからずの負傷者が発生しているに違いない。
 
 私はこのような修羅場を、1998年ベルリンで、ベルリン・フィルのジルベスターコンサートの後、この都市の象徴とも言えるブランデンブルグ門付近で経験した。そして、恐怖におののき、逃げるようにホテルに戻った。今後、どこであろうと、二度とこの年明けイベントには足を向けないと誓った。
 
 この日、バーデン・バーデンからフランクフルトに戻ったのは、午後10時過ぎだった。開いていたレストランで遅い夕食を取り、午後11時にホテルに戻った。翌朝の出発のために荷造りを行い、さて寝ようかと思ったちょうどその時、年が明けた。
 閉じた窓の外から、あちこちで「ドッカーン!」「ヒュ~~!」「バコーン!」「バリバリッ!」「ドドド!」という音が聞こえる。
 
 「やれやれ、本当に懲りない連中だわい・・・」
 
 それに比べて、日本の新年はなんて厳かで心落ち着くのであろうか。除夜の鐘を聞きながら、家族や友人と初詣に向かう・・・。やっぱ日本人の心だねえ。
 
 窓の外の喧騒はしばらく静まる気配はなかったが、やがて睡魔の方が勝って、いつのまにか眠りについた。