サントリーホールが25周年だそうだ。
25年・・・。四半世紀。信じられない、もうそんなに経ったのか。
このホールが日本のクラシック音楽界にもたらした恩恵と価値はとてつもなく大きい。その音響は内外のトップ演奏家たちが口を揃えて絶賛する。世界屈指のホールであることは間違いない。まさに日本のクラシックの殿堂であろう。
25年前。当時、私は大学4年生。(やばい、年齢バレた(笑)) ホールがオープンした10月の頃は、就職活動も何とか無事終了し、卒業までのひととき、私はコツコツとアルバイトしつつも、のんびりと優雅に残り少ない学生生活を満喫していた。アルバイトで稼いだお小遣いは、飲み代とデート代とクラシックコンサート代につぎ込んでいた。(まだオペラには目覚めておらず、国内と外来のオーケストラ公演がほとんどだった。)
その当時、東京のクラシックコンサートのメッカといったら、東京文化会館。あとはNHKホールと昭和女子大学人見記念講堂。五反田にあるゆうぽうとホール(昔は簡易保険ホール)も時々行ったっけなあ。今は昔、懐かしいのう・・・。一足先に大阪にシンフォニーホールが建てられて、何となく羨ましい気持ちがあった。
そんな時、ついに、東京赤坂にサントリーホールが誕生した。これはとてつもない革命的とも言える大事件だった。
カラヤンのアドバイスを取り入れ、ベルリンのフィルハーモニーホールを模した日本初のワインヤード型。国内最大級のパイプオルガンの設置。当時の最高のテクノロジーを結集させた音響工学。丁寧なおもてなしを提供するレセプショニスト。お酒も飲めるバーコーナーの設置。何もかも斬新で最先端だった。
開幕シリーズ公演は当時有名なプロデューサーが企画し、翌年の3月まで続いて、ベルリン・フィルなど、世界中から錚々たるトップオーケストラ、トップ演奏者が集結し、連日のごとく名演が繰り広げられた。(ホール建設に一役買ったカラヤンは残念ながら体調を崩し、小澤征爾に変わってしまったが。)
ホールの響きの美しさ、豊かさは瞬く間に大評判となり、しばらくはどんな公演でもチケットはソールドアウト、大学オーケストラの普通の発表会公演でも売り切れたという、やや異常とも言えるほどの熱気に包まれていた。
1986年10月12日、記念すべきオープンの日。開幕特別演奏会となったサヴァリッシュ指揮NHK交響楽団のベートーヴェン第9コンサート。私はこの歴史的な公演に立ち会う名誉を授かった。超が付くプラチナチケットで、正攻法による一般販売での入手に失敗していたのだが、クラシックコンサート業界の一端を担う会社でアルバイトをしていた関係で、運良く手に入れることが出来たのだ。
初めて見るワインヤード形式のホールは、見た目も美しく、眩いばかりで、思わずため息が出た。自ら音響を確かめようとする何人ものお客さんが、あちこちで自分の手を「パチン」「パチン」と叩いていたのがおかしかった。
その時の私の座席はP席の一列目だった。目の前は合唱団だった。これまで体験したことがない豊かな響きに包まれ、また、あたかも合唱団の中にいて自分も歌っているかのような雰囲気を味わえて、体が震えたことを今も覚えている。なにもかもがスペシャルであった。
この歴史的な公演は報道され、ステージ写真が雑誌にも大きく取り上げられた。そのうちの何枚かには、合唱団の真後ろのP席最前列で、手に汗握って聞いていた「私」が写っていた。(^o^)v
ところで、この記事を書くにあたって当時の公演記録データベースを調べてみたら、この年1986年は、信じられないほどの超ビッグな公演の目白押しであったことが判明した。次回、ちょっとこれを紹介しようと思う。