2011年8月4日 PMFオーケストラ・チャリティコンサート オペラシティコンサートホール
指揮 ファビオ・ルイージ
正直なところ、寄せ集めのオーケストラというのはあまり好きではない。もっと言うと、ユースオーケストラというのもあまり好きではない。
バイロイト祝祭管などの特別な物を除き、寄せ集めオーケストラには伝統的に継がれるオリジナルの音色やアイデンティティといったようなものが欠けている気がするし、ユースオーケストラからは「オレの上手さを聴いてくれ」みたいなテクニックの偏重と誇示が感じられるからだ。
ところが、このPMFオーケストラからはそうした嫌らしさがあまり感じられない。なぜだろう?
おそらく最初は、考えもアイデンティティもバラバラな個人の集合体で、オーディションに合格して「自分は上手い」と思い上がっている似非エリート集団なのだと思う。それが約1ヶ月間のアカデミーで、プロ中のプロの講師陣から徹底的にオーケストラについて叩きこまれ、世界一流の指揮者から直々に音楽を教わって、みるみるうちに本格的なオーケストラ集団に変貌するのだと思う。
伝統的なプロオケは、指揮者の音楽と自分たちのやり方に相違が発生した場合、オケのプライドとこだわりの姿勢を貫いて、結果、音楽が妥協の産物になることがある。
しかし、このPMFオーケストラでは、そういうことはない。指揮者の要求にストレートに応えようとするため、指揮者が考える音楽そのものがダイレクトに浮かび上がる面白さがある。私が「寄せ集め」も「ユースオケ」も好きでないのにもかかわらず、毎年のようにPMFのコンサートに出かけるのは、こうした理由によるものだ。
この日のメインのブラームスがまさにその典型だ。
ルイージの仕掛けに対するオケの反応は機敏。またルイージの指揮がとにかく熱いので、音楽があっという間に興奮の坩堝と化す。どの場面でも常に音量が大きいのは、若者特有のエネルギー発散の賜物だとして大目に見よう。聞き手も楽しいし、演奏している方も楽しいし、指揮者も満足の三拍子揃ったコンサート。いいではないか!
順序が逆になったが、一曲目のソロを吹いたスティーヴン・ウィリアムソンは上手かった!私は彼が何物であるかを知らずに演奏に臨んだのだが、第一楽章が終わった後のパウゼで、思わずプログラムを取り出してプロフィールをチェックしてしまった。メトの首席奏者で、来シーズンからシカゴ響の主席に移るんだって。なるほどな、と大いに納得した。