クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2011/6/17 新日本フィル

 
 
 正直なところ、期待は外れた。拍子抜けだった。
 「良くなかった、悪かった」というつもりはない。いつものハーディングらしくなかったとでも言おうか。
ハーディングらしさ-例えて言えば、虫めがねで覗き込んで発見した物をわざと拡大させたり、薬品と薬品を調合させて化学反応を起こさせるかのような、そんなハーディング流のアプローチが影を潜めていた。意外なほどにあっさりとストレートで勝負をしていた。
 
だが、それではハーディングらしくない。なんか、急にいい子ちゃんになっちゃったみたいで面白くない。
 
おそらく、「小手先手法ではこの巨大な交響曲に立ち向かえない」と判断したのだろう。だが、もしそう判断したのなら、今回、このプログラム選曲は時期尚早、あせって手を出してしまったと言わざるをえない。
別にいいではないか、小手先手法で立ち向かった結果、仮に空中分解に終わったとしても。極東のオケでの出来事は彼のキャリアに何の傷もつかない。たとえ異端と言われようが、ハーディングらしく細部にこだわってこの曲をぶった斬り、「解剖してみたら、こんなふうになってしまいました」というグロテスクさを見せて欲しかった。それこそが彼の持ち味なのだから。
 
良かった点、感心した点はもちろんあった。
弦楽器のトレモロの中から木管群のソロを浮かび上がらせる構築手法は実に見事だった。オーボエ、ホルン、クラリネットのソロはとても美しかった。音楽が必要以上に重たくならないように、テンポをキープし推し進めるやり方も好感が持てた。
 
ハーディングの本領発揮、今回の来日のメインは、ひょっとするとすぐ次に迫ったマーラー5番なのかもしれない。きっとそうだ。ブルックナーを聴いた結果、次のマーラーに期待が高まるという感想に至ったのもちょっとなんだかな、という感じではあるが。
 
そのハーディング、終演後カーテンコールが終わったら、おそらく猛然とダッシュしたと思われるが、あっという間にロビーに現れて、募金箱を持って災害支援金を募っていた。来場した沢山の方たちが彼を取り囲み、進んで募金をしていた。その光景は本当に美しく、実に頭が下がる思いだった。