クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

いよいよメト 2

メトロポリタン・オペラの来日公演は、直前にネトレプコとジョセフ・カレヤが降板してしまった。それに伴うキャスト変更が物議を醸し出している。
ジョセフ・カレヤに変わって、ロランド・ビリャゾンとマルセロ・アルヴァレスが急遽来日することになったのはいいとして、問題はネトレプコの代替。なんと、ドン・カルロのエリザベッタを歌うために来日したフリットリが横滑りでミミを歌うことになり、エリザベッタは初来日のマリーナ・ポプラフスカヤが歌うことになったのだ。
 
 いろいろな不満がありそうだが、特に怒りが収まらないのはドン・カルロのチケットを買ったファンたち。そりゃそうだろう。当初予定からレヴァインが落ち、カウフマンが落ち、ボロディナもダメで、挙句の果てにフリットリまでときたら。しかもフリットリは横取りじゃないか。そりゃあまりにもヒドイ。これほどまでにキャストが変更になっても主催者はキャンセル返金を認めないから、ネットのクラシック掲示板などでは大荒れである。
 
 確かに気持ちは分かる。私だってそりゃ残念だ。
 
 だが、だからと言って私はキャンセルしたいとは全く思わない。これっぽちも思わない。
 
 理由は二つ。
 一つは、オペラの世界ではこういうことは起こりうるということをよく知っているから。オペラを観るために海外までも足を運んでいる私は、この種のキャスト変更をこれまでも何度も経験している。オペラの世界では日常茶飯事と言ってもいい。
だが、海外の劇場で、メイン指揮者や主役が落ちて聞いたこともない代役に替わったからといって、払い戻しに応じているのを見たことがない。諦めるしかない。オペラを観るためにチケットを買うということは、そういうことを覚悟しなければならないのだ。
ましてや、現在の日本は危機的状況である。来日公演自体がつぶれたっておかしくなかったのだ。文句は言えない。
 
 もう一つ。
 確かに楽しみにしていた歌手が変わってしまうのは残念なことだ。だが、キャンセルしたいという人は、その歌手を聴きたいだけだったのだろうか。
 私は作品を鑑賞したい。オペラが見たい。歌手は二の次である。キャンセルするということは、そのオペラを見逃すことを意味する。例えば、ネトレプコはこれからも聞く機会があろう。だが、メトロポリタン・オペラのドン・カルロを観る機会はもしかしたらもうないかもしれないのだ。
 
 だから、私はあれだけキャストが変更になっても、それでもなおメトのオペラを楽しみにしている。
 
 オペラを見よう。オペラを語ろう。音楽を楽しもう。それでいいじゃないですか。