クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2008/5/9 ウィーン

 やべ、2008年5月の旅行記を早く終わらせなくては。もう次の旅行が迫っている・・・。
 
 
 前日、終演が午後11時を回ったローエングリンから一夜が明け、早朝にジュネーブ国際空港に向かった。確か午前9時くらいのフライトだったと記憶する。ということは午前6時半にはホテルをチェックアウトし、7時頃には空港にいたはずだ。前夜遅くオペラが終わってホテルに戻り、十分な睡眠時間も確保できずに朝早く起きて荷物をまとめ、朝食も取らずにバタバタ慌ただしく空港に向かったわけだが、まさかそこで前夜の主役の一人、指揮者殿に遭遇するとは思わなかった。
 いやセーゲルスタムさんもお忙しいですねー。お疲れではありませんか?ご苦労様です。次はどちらでお仕事ですか?
 
 それにしてもセーゲルスタム。ただでさえユニークな風貌なのに、ラフでカラフルでかなり派手なシャツを着てのっしのっしと空港内を闊歩しているものだから、周囲の人間がみんなギョッとして振り向いているのがめちゃくちゃ笑えた。この人がまさか世界的な指揮者だとは誰も思わないだろう。私は特に声掛けはしなかったが、出国ゲートに向かう彼を見送りながら、「昨日は素晴らしかったでしたよ。」と心の中で拍手を送った。
 
 ベルギーからスタートし、ドイツ、スイスとずっと電車で移動してきた今回の旅行も、最後の最後で飛行機を使った。目的地はウィーン。
 
 午前中にウィーン入りし、さっそく国立劇場連盟チケットセンターに行ってその日の夜のオペラチケットを受け取る。さてと、この後どこで何しようかと思案していたところ、ふと看板が目に止まった。「シュターツオペルンムゼウム=国立歌劇場博物館」とあった。「あれ??こんな博物館があったの!いつの間に!?」
早速博物館に向かった。チケットカウンターの係の人にいつ出来たのかを聞いたところ、3年前からであるとのこと。あたしゃ全く知りませんでした。
期待ワクワクで入館してみたが、正直、展示の規模としては大したものではない。壁沿いにこれまでの上演史が年表のごとく並んでいて、輝かしい伝統を垣間見る事ができる。あとは、トピックス的な記事、写真、舞台衣装陳列など。サラッと見学するだけなら15分くらいで回れてしまうが、私は備え付けられていたパソコンのデータベースをいじって遊び、そうしたら1時間くらいの時間が潰れた。
 
ついでに夜の公演についても。この旅行の最後の演目。
 
 
2008年5月9日  ウィーン国立歌劇場
コルンゴルト  死の都
指揮  フィリップ・オーギャン
演出  ウィリー・デッカー
クラウス・フローリアン・フォークト(パウル)、アンゲラ・デノケ(マリエッタ/マリー)、マルクス・アイヒェ(フランク)、ジャニーナ・ベヒレ(ブリギッタ)   他
 
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当時、このオペラを観るのは私の念願の一つでもあった。大好きなオペラの一つであるが、上演は非常に稀である。コルンゴルトという作曲家自体がマイナーなわけだが、この傑作までもマイナーのまま埋もれてしまうのは非常に惜しい。
また、このプロダクションは2004年ザルツブルク音楽祭で初演されたが、大評判となった物である。確か音楽の友の記事かなんかで、「現代演出の場合は、大抵プレミエの際にブーの一つや二つが飛ぶものだが、この時、全くブーが飛ばずに賛辞の嵐だった。」と書いてあったのを読んだ。
 
実際、本当に素晴らしい演出であった。
妻をなくし、思い出に生きるパウルの美しい夢と幻想が、徐々に悪夢となっていき、やがて脳を蝕まれ、パウルが精神的に追い込まれていく様が見事に舞台上に体現されている。また、主役のアンゲラ・デノケが聖女と悪女の二役を見事に演じていて、なおかつ歌い方まで変えるその多彩な表現技術は信じられないほどであった。
K・F・フォークトは、この時がロールデビューだった。まだちょっと自分の物になっていないなと感じた。(その2年後にフランクフルトで同役を見た時は見違えたように上手くなっていて、完全に手中に収めていた。)
 
この日のオーケストラはかなり荒れ気味で、何度もバランスを崩している様子だったが、これは明らかに指揮者の責任だろう。もっともレパートリー上演の場合、ほとんどがぶっつけ本番なわけで、これで完璧なコントロールをしろということ自体が無理な注文なのかもしれない。
 
とは言え、ぜひともまた見たい舞台である。素晴らしい舞台だから、きっとチャンスはあるだろう。
ちなみに昨年、パリ・オペラ座で、キャストを変えた上でこの名プロダクションを上演していた。日本でもこういうレンタル制度をもっともっと活用すればいいのにな、と思う。