クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2008/5/5 バーデン・バーデン祝祭劇場

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2008年5月5日  バーデン・バーデン祝祭劇場
管弦楽  マーラー・チェンバー・オーケストラ
ディオゲネスランデス(ドン・フェルナンド)、アルベルト・ドーメン(ドン・ピツァロ)、クリフトン・フォービス(フロレスタン)、アニヤ・カンペ(レオノーレ)、ジョルジョ・スーリアン(ロッコ)、ユリア・クライター(マルツェリーネ)、ヨルク・シュナイダー(ヤッキーノ)
 
 
 1998年、欧州で2番目の規模を誇る劇場がここバーデン・バーデンに完成した。紳士淑女が集う高級保養地で、温泉で体を癒した後、カジノやレストラン、そして劇場で夢のような夕べを過ごす。社交の場のスタイルを確固たるものとし、イメージと知名度と集客をさらに高めようという市の企みは見事に成功した。
 
 「オペラハウス」と紹介をされることもあるが、実際はコンサート、室内楽、リサイタル、バレエ、講演会など、何でもござれの多目的ホール
 また、‘祝祭’と銘打っているが、ザルツブルクバイロイトのように期間限定ではなく、プログラムはほぼ通年で、連日連夜催されている。一年中フェスティバルというわけか。ただし、ここに集うアーティストは世界第一級揃いで、確かに祝祭の名に相応しい。
 
 パリ・オペラ座バスティーユ劇場に次いで欧州で2番目の収容規模とのことであるが、日本にはこれと同等、あるいは更に大きいホールがNHKホール、東京文化会館東京国際フォーラム神奈川県民ホールなどいくつもある。もっとも、クラシックの世界では大きいイコール良いという図式は当てはまらないわけだが。
 
 廃止された駅舎を改築して誕生となった祝祭劇場。実際は、旧駅舎部分はあくまでも劇場のファザード、入り口として残しただけで、ロビー、客席、舞台、舞台裏機構などは全て増築。チケットオフィスは旧駅舎部分にあって、そのカウンターに並んでいると、なんとなく駅の構内で電車の切符を買うかのような錯覚に陥って面白い。
 
 
 この日の公演について。
 何と言ってもアバドの音楽が最大の聴き物。齢を重ねるたびに熟成し、音楽がどんどんと良くなっている指揮者は多いが、このアバドもそうだと思う。特に病気を克服してからは活動を一気に絞ったため、一つ一つの公演が重みを帯びて貴重になり、いっそう集中力の高い演奏になっている。
 ということでこの日の上演も、歌手のアンサンブルより、ピットから聞こえるマーラーチェンバーのきびきびとして歯切れが良く躍動した音楽が出色だった。一般的にベートーヴェンは重厚さが全面に出る演奏が多いが、アバドはあたかもクリスタルグラスのような粒だった輝きをそこにもたらした。カーテンコールでも、最後に指揮者が登場すると会場は総立ちとなって割れんばかりの喝采となった。なんか、すっかりカリスマ性を帯びてしまいましたね、アバドさん。
 
 演出は、物語をフランス革命に当てはめ、民衆の決起による圧政からの開放を描いていた。その象徴として常にギロチンが舞台に置いてある。ただし、演出上の踏み込みはそこまで。着眼点はもちろん良いのだが、それだけのアイデアならきっと他の誰かが思い付いているだろう。やや物足りなかった。