2008年5月3日 リエージュ王立歌劇場
ドニゼッティ マリア・スチュアルダ
指揮 ルチアーノ・アコチェッラ
パトリツィア・チョーフィ(マリア・スチュアルダ)、マリアンナ・ピッツォラート(エリザベッタ)、ディアナ・アクセンティ(アンナ)、ダニーロ・フォルマッジア(ロベルト)、フェデリコ・サッキ(ダニロ) 他
リエージュは、日本ではそれほど知名度は高くないかもしれないが、伝統的でロマンチックな馬蹄形様式の立派な王立劇場。建物の外観も威容を誇っている。ただし、内部はちょっと古錆びた感じがしないでもない・・と思ったら、HPによるとただいま改装工事中だそうで、場所を移して特設テントみたいなところで上演を行っているようだ。
このオペラの上演の成功は、マリア・スチュアルダとエリザベッタという二人の主役の女声がすべて鍵を握ると言っても過言ではない。先日新国立劇場で見事なヴィオレッタを聞かせた名ソプラノ・チョーフィと、昨年藤原歌劇団のタンクレーディで鮮烈な印象を残したピッツォラート。二人の華やかな競演によってベルギー東部ワロン地方にイタリア・ベルカントオペラの花が咲いた。
最大の見どころ、ハイライト、マリアとエリザベッタの対決の場面。愛する人のアドバイスを受け入れて屈辱にまみれながらも神妙に膝まずいて恩赦を求めるマリアと、それを拒絶して更に侮辱の勢いを増すエリザベッタ。ついに堪忍袋の緒が切れたマリアが感情むき出しで「恥知らずの卑しい私生児め!」と罵ってしまう。(ああ、嫉妬に駆られた女の情念は怖いっ・・・。)
いやはや、この場面でのマリアを演じるチョーフィの迫真の演技の凄かったこと!観ている人の背筋を凍らせた。こちとら「そんなに激しく怒らなくても・・。何かピッツォラートさんに恨みでもおありですか?」などとさえ思ってしまった。こういう直情的な演技はイタリア人は得意ですよねー。