2011年3月4日 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 サントリーホール
指揮 リッカルド・シャイー
極めてユニークなブル8だ。ブル8でこれほどまでに面白く尖った演奏は今まで聴いたことがない(生で)。シャイーのブル8はある意味異色とも言える。だが、これを異色と感じること自体が、凝り固まった曲のイメージに縛られている証拠でもある。「足取り重くゆっくりで、雄大で、豊かな低弦に支えられた木目調の渋い響きこそがブルックナーだ」といったい誰が勝手に決めたのか?シャイーは鮮やかに新風を巻き起こしたのだ。
特徴として、まず弦楽器の弱音のソフトさが挙げられる。シャイーはゲヴァントハウス管の弦楽器の実力を十分に踏まえて、このオケだからこそ可能な微弱のトレモロを創出した。
そして、独特のアクセント。他の指揮者の演奏では聞こえてこない埋もれた音符に、シャイーは確信的にパッパと調味料を振りかける。そう、シャイーこそ「ザ・料理人」、シェフなのだ。彼はいつもこのように音楽を料理し味付けする。イタリアでも、コンセルトヘボウでも、ライプツィヒでも。
2011年の末、年の終わりにあたって、国内コンサート部門では「ゲヴァントハウス管がベストだった」と振り返るのではなかろうか。どうもそんな気がしてならない。
ところで、一つ面白いことに気が付いた。コントラバスの奏法である。
弓の持ち方には二種類あって、チェロと同様に手の甲を上にして弾く方式と、手のひらを上にして弓を引くように弾く方式がある。前者がフランス式、後者がドイツ式だそうだ。
欧米のコントラバス奏者は圧倒的にフランス式で演奏している人が多い。数の比率で言えば8対2くらいだ。ドイツ式と言いながら、ドイツ・オーストリアのオーケストラの奏者でさえフランス式を採用して演奏している人が多い。(ちなみに、日本人はほぼ100%ドイツ式)
ところが、このゲヴァントハウス管のコントラバス奏者は、100%全員がドイツ式で弾いていた。これを私は「奏法も含めて伝統を頑なに守り通そうとするゲヴァントハウス管の意志の力」と感心したのだが、讃えすぎだろうか?それともたまたま偶然か??(笑)