クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2010/12/29 大阪フィル

指揮  ゲルハルト・ボッセ
釜洞祐子(ソプラノ)、寺谷千枝子(アルト)、櫻田亮テノール)、藤村匡人(バリトン
合唱  大阪フィルハーモニー合唱団、大阪音楽大学合唱団
ベートーヴェン  交響曲第9番合唱付
 
 
 年末、大阪に遊びに行ってきた。
 何を隠そう、行き先はどこでも良かったのだ。だが、「クラシック音楽、オペラの道を極める!」と宣っている以上、どうせならクラシック音楽をやっている所がいいではないか!?
 こうして、たまたま第9をやっていた大阪行きが決まった。この時期はどこに行っても第9しかない。それは最初から承知の上。
 第9、いいですよ、上等じゃないですか。名曲ですから。12月の風物詩、師走恒例の第9は本当に久しぶりだ。
 
 大阪はほとんど初めてみたいなものだった。ザ・シンフォニーホールももちろん初めて。まずはそのホールの印象から。
 
 日本で初めてのクラシックコンサート専用ホール。1982年にオープンした時は話題になった。その後カラヤンベルリンフィルも登場し、当時は前途洋々たるホールだった。もちろん、今でも関西におけるクラシックコンサートのメッカに違いない。
 だが、その後に出来たサントリーホールやオペラシティホールなどにすっかり馴染んでいる身からすると、やはりちょっと‘一昔の’という感じがする。音響もやや固い。まあこればかりは仕方ないか。
 ロビーの一室に、そのカラヤンバーンスタインが登場した時の写真がパネルで展示されており、このホールの往年の輝きを垣間見ることが出来た。(当のご両人は、一緒に並べられるのはきっと嫌がっただろうが。)
 
 さて、肝心の大阪フィルの第9。
 
 指揮のボッセがますます老けてしまった。背中が曲がり、老骨に鞭打ってヨロヨロと指揮台に歩むボッセ。人の手を借りながら指揮台のステップに上がるボッセ。椅子に座って指揮をするボッセ。腕をブンブン振り回すことが出来ず、必要最小限の手先の動きで指揮するボッセ。
 御年88歳だそうだ。そんな痛々しい姿を見ると、こっちが頭を抱えてしまう。こんなお年寄りを働かせていいのか?こんな最小限のタクトでいったい何を表現出来るというのだ?そういう人を指揮台に立たせる意義はあるのか?
 
 ところがですねー、意義があるんですねー、これが。これこそが自らは音を出さない演奏家「指揮者」のミステリアスなところだ。
 
 タクトから発せられる電波が微弱であるほど、オーケストラはそれをしっかり受信しようとアンテナを広げ、集中力を高めようとする。長年にわたって音楽界に貢献してきたマエストロの実直な姿勢に応えようと、よりひたむきになる。聴衆もまたそんなマエストロに敬意を抱き、一音一音を聞き逃さぬよう耳を傾ける。やがて音楽はどんどん天へと昇華していてき、力みが消えて柔和になり、その神々しい姿に後光が差す。これぞ巨匠が紡ぎ出す神秘。
 
 歳とともにテンポが遅くなって鈍重になる指揮者が多い中、サクサクと快走する明るい響きも気に入った。目をつぶって音だけ聴けば、年齢を感じさせない颯爽とした第9だった。会場は割れんばかりの拍手とブラボーに包まれた。ボッセはしてやったり、満面の笑み。
 年の瀬のこの日、詰め掛けた聴衆も大満足。「今年ももう終わりだね。」などと語り合いながら、さぞ幸せな気分で帰路についたことであろう。我々もそのまま新世界・通天閣の飲み屋街に直行した。
 
 ところで、配布されたプログラムに記載されていた略歴で初めて知ったのだが、マエストロボッセ、日本在住なんだってさ。へー、知りませんでした。この第9のためにわざわざ来日してホントご苦労様、と思っていたが、そういうことだったのかー。