クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

新国立トリスタンへの期待

 今度の新国立劇場の「トリスタンとイゾルデ」が間違いなく名演となって成功し、新国立の上演史の1ページに刻まれるであろう、以下、これだけの理由。
 
1 オペラ史上に燦然と輝く偉大な作品であること
 結局もう、すべてこれに尽きちゃうって感じだ。
 この作品は上演されること自体が特別な意味合いを持つ。過去においてウィーン国立歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ、バイエルン州立歌劇場、ベルリン州立歌劇場などが日本でこれを上演し、いずれも観客に深い感銘を与え大成功に終わっているが、それは演目が「トリスタン」だったから、というのも大きいと思う。我々はしたり顔で「名演だった」とその演奏を称えたが、ひょっとすると実は演奏云々ではなく、単に作品そのものの魅力に圧倒されただけなのかもしれない。
 そんな偉大な作品を、ついにようやく新国立劇場が取り上げるのだ。
 
2 指揮者大野和士
 なんたって紫綬褒章受章、文化功労者受賞でっせ。バーデン州立歌劇場、ベルギー王立歌劇場(モネ劇場)を経て現在フランス国立リヨン歌劇場音楽監督ミラノ・スカラ座、メトロポリタンオペラ、バリ・オペラ座などに客演(来年はバイエルン州立歌劇場にも登場予定)。現在、世界の一流歌劇場でこれだけ活躍している日本人はいない。その大野さん待望の新国立再登場の演目がトリスタンでっせ!
 
3 大野さんの3度目のトリスタン
 全てのキャリアを承知しているわけではないが、間違いなければ、バーデン州立歌劇場、モネ劇場での上演に続き、3度目だと思う。要するに、手中に収まっているレパートリーということだ。自信は相当にあることだろう。ちなみに、ブリュッセルでの公演については、NHKのプロフェッショナルというドキュメンタリー番組で紹介された。
 
4 イゾルデ役I・テオリン
 モネ劇場での上演の際、新機軸を打ち出すために当時まだ無名だったソプラノ歌手がイゾルデ役として抜擢された。それがテオリン。いわば、大野さんに見出された歌手なわけだ。その後テオリンはバイロイトでも同役を歌うまでに成長した。今回、指揮者の音楽を既に心得ているという点で、大きなアドバンテージだ。
 
5 トリスタン役S・グールド
 ウィーン国立歌劇場バイロイトで堂々ジークフリートを歌った世界屈指のヘルデンテノール。既にジークフリートの他、パルジファルタンホイザーローエングリンなどの役を物にしているが、今回満を持してトリスタンに初チャレンジ。新たなトリスタンがここ東京で誕生する。我々が第一目撃者だ。
 
6 ブランゲーネ役E・ツィトコーワ
 ケルピーノ、ドラベッラ、オルロフスキー、フリッカ、オクタヴィアンで新国立劇場に登場しているが、海外招聘組でこれほど登場回数が多く、貢献している歌手は他にいないのではないか。まさに新国立劇場のファミリーでありアイドル。ファンも多いらしい。今回のブランゲーネ役も言わば‘必然’だ。
 
7 演出家D・マクヴィカー
 英国を中心に活躍する世界的な演出家。「大物」である。演技指導は細かく徹底的。大野さんとはモネ劇場が製作したドン・ジョヴァンニで一緒に仕事をしている。同演目は日本公演も実現しており、日本のファンにも質の高さを実証済みだ。
 
8 観客の期待
 全公演前売券ソールドアウトなんて、ドル箱アイーダ以来ではないか?私を含め、全てのオペラファン、ワーグナーファンが公演を待ち侘びている。さぞかし会場は熱気に包まれることだろう。その熱気は必ずや舞台やピットに届き、渾身の演奏を呼び起こすことになるだろう。名演奏が生まれるためには、観客の固唾を飲んだ熱視線も欠かせないアイテム。
 
 
 一時期、年末の海外旅行を検討したため、今回のトリスタンは最終日の1月10日を確保した。だが、旅行を取りやめた結果、既に一回行く権利を持っているにもかかわらず、無性に12月中にさらに行きたい衝動に駆られた。ついに禁断のオークションに手を出してしまい、プレミアムを上乗せして初日(25日)のチケットを買い足してしまった。
 
 ということで、いやあ、楽しみです。いよいよプレミエが・・・おっと、明後日だ!!