フルトヴェングラー、トスカニーニ、ベーム、カラヤン、バーンスタイン、クライバーなどのように、その名を歴史に刻み、永く語り継がれる伝説的な名指揮者になるかと言えば、難しいかもしれない。現代の世界的指揮者を指折り数えて10本の指に入るかといえば、これもまた微妙なところである。だが、クラシックファンを自称する人ならばプレヴィンを知らない人などいないだろう。もしいたら、自称クラシックファンの看板は下ろした方がいい。
クラシックのCDをある程度幅広く保有している人なら、そのライブラリーの中に必ずプレヴィンのアルバムが何枚かあるはずだ。
だが、クラシック音楽はこれらのメジャーな作曲家だけで決して成り立っていない。年代、国、様式などによって様々な作曲家がいて、その幅広さこそがクラシックの魅力なわけだが、その間隙にプレヴィンはいる。ちゃんと彼の居場所があって、まさにそこで光り輝いている。
ラフマニノフ、ガーシュイン、プロコフィエフ、エルガー、ブリテン、R・シュトラウス、メンデルスゾーン、ドヴォルザークなどといった音楽の録音で、いったいプレヴィンはどれほど名盤を世に送っていることだろう。それ以外にも、オルフのカルミナ・ブラーナ、リムスキー・コルサコフのシェヘラザード、ホルストの惑星なども誉れ高い。
プレヴィンはいったい何者なのだろう。
ベルリン生まれ、両親はロシア系、フランスで育った時期があって名前はそれ風。若くして米国に渡ったが、ロンドン交響楽団など、活動の中心をイギリスに置いていた時期もあったし、ウィーン・フィルとの結びつきが強い時期もあった。ピアノも弾く。作曲もする。ジャズもたしなむ。前の奥さんはアンネ・ゾフィー・ムター・・あ、それは別にどうでもいいか(笑)。
プレヴィンの多彩なレパートリーは、こうした自身の多様性から来ているに違いない。
それにしても才能の宝庫。これほどのタレントは、というと、他にはバーンスタインくらいしかいないのではないか?年齢的にも、もう大巨匠の域に到達してもいいはずなのにそうでもないのは、見かけが温和そうで、やや地味だから??
上で「ライブラリーの中に、必ずプレヴィンのCDがあるはず」と書いたが、私も少なくとも10枚以上は持っていると思う。面倒くさいので数えないけど。