クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2010/10/8 ダフネ

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2010年10月8日  ザクセン州立歌劇場(ゼンパーオーパー)
R・シュトラウス  ダフネ(新演出)
指揮  オメール・メイア・ウェルバー
演出  トルステン・フィッシャー
カミッラ・ニールント(ダフネ)、ロバート・ディーン・スミス(アポロ)、ラディスラフ・エルギル(ロイキッポス)、ゲオルグ・ツェッペンフェルト(ペナイオス)、クリスタ・マイヤー(ゲーア)  他
 
 
 出だしのほんの数小節、オーボエクラリネットが動機の旋律を奏でただけで、このオケの実力が如実端的に示される。ドレスデン・シュターツ・カペレ、惚れ惚れするくらいに上手く、掛け値なしに素晴らしい。このオケは「R・シュトラウスの演奏はかくあるべき」の基準、模範をももたらす。舞台なんかなくても充分満足できる出来である。
 
 そのオケを統率していたのが、先日松本でのサイトウキネンフェスティバルで、御大小澤征爾の代役としてサロメを振ったメイア・ウェルバー。頑張っていた。かなり気合が入っていて、もう少し肩の力を抜いた方がいいのでは、とも思ったが、ちゃんとオケが絶妙のバランス機能を発揮してくれたので、結果、見事なシュトラウスに仕上がり、大成功となった。カーテンコールではしっかりブラボーも飛んでいた。来年はスカラ座でのトスカも控えている。「前途洋洋、有望」とみていいのではないだろうか。
 
 演出について。
 今や、このオペラをただのギリシャ神話として展開する演出家などいないだろう。
 アムステルダムで見たダフネで、名(迷?)演出家P・コンヴィチュニーは、「男たちになびかず、男の価値観に従わない女性(ダフネ)は、強制的に変容させる(処刑させる)べき」と捉え、そこに忍び来るナチスの影を投影し重ね合わせるという手法を取った。見事な解釈だったと思う。
 
 そして今回のトルステン・フィッシャーも、「パクリでは?」と思うくらい、同じアプローチを取った。
 彼は、ダフネに対して強引に誘惑し、歯向かう者(ロイキッポス)を遠慮なく処刑するアポロを、ナチスゲシュタポ長官に仕立てた。最後の変容の場面では、美しい音楽をバックに、人々をアウシュビッツ送りにしていき、最後にダフネもこれに従って死へと向かっていった・・・。
 さすがに、露骨に鉤十字マークなどではっきりナチスを指し示すことはしなかったし、収容所も出てこない。だが、誰が見てもナチスの強制と分かる。これはドイツ人にとって、かなり目を背けたくなるような辛い演出だったと思う。しかも、指揮者はイスラエル人。私は観ていて、本当にハラハラした。
 
 ところが。終演後、凄まじいブーイングが飛び交うかと思いきや、静かな拍手で、反応が鈍かった。それでいいのか?ドイツ人。びっくり、意外だった。
 
 歌手では、ダフネを歌ったニールント、アポロを歌ったD・スミスともに盛大な拍手で讃えられていたが、わたし的には普通だったと思う。それよりもペナイオスを歌ったツェッペンフェルトが良かった。