午前中いっぱいを移動に費やして、ドレスデンに移動。快晴の秋の空。
‘エルベ川のフィレンツェ’などと讃えられる古都ドレスデンだが、一方でどんどんと近代化を推し進めており、昔は何も無いだだっ広い一本道だった駅前のプラハ通り(中央駅から旧市街に向かう通り)も、豪華なデパートやモール、目映いショーウィンドウを持つブティックなどが連なる華やかなショッピング通りとなって、賑わいを見せている。戦争の焼け野原から見事に復興したが、街は未だに再建中で、あちこちに建築クレーンが立ち、立入禁止の柵が設けられている。今や、いにしえを偲ばせる佇まいが色濃く残る石畳の街並みは、本当に中心部の一角だけといっていい。なんだか、観光客の我々としては若干寂しい気もするが。
今回で9回目の訪問。これはミュンヘン、ウィーン、パリに次いで多く、ロンドンやミラノよりも多い回数である。
真作はわずか30数点しかないと言われるフェルメールの作品を一展覧会に数多く集めるのは至難の業で、堂々「フェルメール展」と銘打っているものの、他の美術館から借りてきた作品はわずかに二点。これに加えてもともとゲマルデギャラリーが所有している二点と併せ、合計四作品の陳列だ。たったこれだけでも「フェルメール展」になってしまうすごさ。もっと言うと、来年に渋谷・ザ・ミュージアムでフランクフルト・シュテーデル美術館からたった一点を借り受けただけで「フェルメールとオランダ・フランドル展」を開催して、その最大の目玉になってしまう。「稀少」というのは、かようにも価値を持つ。
かく言う私も、フェルメールの稀少さ、神秘さにひきつけられている者のひとり。
面白かったのは、館内の一室に作品の空間を再現した小部屋(モデルや家具などが忠実に配置されている)が作られていたこと。訪れたお客さんがみんな画家の視点でその部屋を覗き込んでいた。