クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2010/8/1 トリノ王立歌劇場 椿姫

2010年8月1日  トリノ王立歌劇場  東京文化会館
ヴェルディ  椿姫
指揮  ジャナンドレア・ノセダ
演出  ローラン・ペリー
ナタリー・デセイヴィオレッタ)、マシュー・ポレンザーニ(アルフレード)、ローラン・ナウリ(ジョルジョ)、ガブリエッラ・スポルジ(フローラ)  他
 
 
 最初から最後までナタリー・デセイに釘付けだった。オペラグラスで覗き込んでいた時間の多かったこと!
 デセイ一世一代のヴィオレッタ。徹頭徹尾、役を演じきっている。すべての仕草、表情、体の動きが念入りに計算し尽くされている。
 歌手によっては歌唱を優先するあまり、アリアで棒立ちになってしまう人がいるが、デセイに関してはそんなことはあり得ない。彼女の表現手段において、演技と歌はどちらが優先されるでもなく同等なのだ。重要なのはドラマの必然性。そこに必然があれば、演出上の要求すべてを受け入れる。日ごろからそういうトレーニングを積んでいるのだろう、動きながら、あるいは寝そべりながら歌うことが苦になっていない。
 
 つまり、彼女は女優なのだ。歌手ではなく、飛び切り上等に歌える女優。
 
 演出家ペリーが、そんな彼女の演技を想定した振付をし、舞台を作ったことは一目瞭然。舞台に並んだ箱のような台は、あたかもスポットライトを浴びるためのステージのようだ。高さも大きさも違うそれぞれの台を飛び越えながら移るたびに、異なるステージを渡り歩く女性の生き様が表出される。それは波乱万丈のヴィオレッタの人生そのものなのだ。
 
 この日もノセダの指揮は絶好調。最終日ということもあってか、さらにタクトがパワーアップし、唸り声も炸裂。こんなにも用意周到に準備を整え、本公演に全力投球してくれて、観客の我々はただただ感謝に堪えない。
 
 カーテンコールで、全力を出し切り、達成感に満ちた出演者たちの笑顔が本当に素敵だった。デセイは、自ら観客の手拍子をリードしながら、それに合わせてピョンピョン跳ねていた。純粋な喜びの表現なのか、それとも、それさえも観客を惹きつけ魅了させるための手段として計算ずくの演技なのか・・・・。最後の最後までデセイの一挙一動に目が釘付けだった。