クラシック、オペラの粋を極める!

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展覧会の絵

 これまでの生涯最高の「展覧会の絵」体験。
 ショルティ&シカゴ響も凄かったし、フェドセーエフ&モスクワ放響も名演だった。だが、ダントツは、とある無名の高校吹奏楽部の演奏。その高校とは、何を隠そう我が母校、埼玉県立K高校。
「なんだあ?自分が演奏したものかいな!?手前ミソってやつか!?」
いやいや、違います。あくまで聴いた体験ですから。
 
 遙か昔のこと。小学4年生からトランペットを始めた私は、中学のブラスバンド部でも先輩を押しのけて一年生の時からパートトップを担ったこともあり、その腕前には少々、というよりも、かなりの自信があった。天狗になっていたわけだ。井の中の蛙といおうか。
 
 中学3年のある日、天狗君は友人に誘われて、地元のK高校吹奏楽定期演奏会に出掛けた。(まだこの時点では受験する予定の希望校は決まっておらず、自分がそこに入学することになるとは思っていなかった。)
 全体的な演奏レベルはお世辞にも高いとは言えない。なんたってコンクールではいつも県予選止まり。全国大会出場など夢のまた夢。そんな普通の高校の演奏で、私は史上最大級の衝撃を受けたのである。
 
 その衝撃とは-
 同高校のラッパ部隊を率いるトップ奏者さんが、とてつもなくうまかったのだ。
 中学生と高校生の違いがあるとはいえ、同じ楽器を奏でているとは到底思えないくらいの凄腕だった。自分との実力差もさることながら、舞台に上がっていた他の部員の中でも、その実力は一際抜きんでており、一人だけ目立っていた。うまい!とにかく上手い!
 
 で、この時の演奏会のメインプログラムが、吹奏楽バージョンによる「展覧会の絵」全曲だったというわけ。
 
 まず冒頭のトランペットソロ「ラ・ソ・ド・レソミ、レソミ・ド・レ・ラ・ソ」、これだけで私はひっくり返る。「サムエル・ゴールドベルグ」の輝かしい高音トリル、圧巻は「キエフの大門」の壮大なファンファーレ。「展覧会の絵」がまるでトランペット協奏曲のように聞こえた。
「いったい、あのお方は何者??」本当に高校生なの?この人プロじゃないの?
とにかくアンビリーバボー、同じ楽器を吹く人間として脳天をかち割られたような気分だった。
 
 一年後、運命により私はこの高校に入学し、吹奏楽部の門を叩いた。残念ながら、あの衝撃のミラクルトランペッターはいなかった。私と入れ違いで卒業してしまったのだ。
 
 ところが、そのやさしい先輩はその後も度々母校にやってきて、厳しくも的確な指導をしてくれた。見本として吹いてくれるその輝かしい音にはただただ舌を巻くばかりだったが、目からウロコが出るようなアドバイスを何度ももらった。
 
 検索したらHPを出していたので、アドレスを張らせてもらうと同時に、実名を出してしまおう。
 
 憧れだった先輩、尊敬して止まなかった先輩、島田俊雄さん。
 
 いったん普通の大学に進学したが、その後東京芸術大学大学院に入学。第1回日本管打楽器コンクール第3位入賞、第2回モーリス・アンドレ国際トランペットコンクール第4位入賞。東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の奏者として活躍中・・・と思っていたら、今年3月でご退団されたそうですが、いずれにしてもバリバリのプロです。
 
 こういう人が普通の高校のブラスバンドにいたわけだ。そりゃ目立つわな。
 
 島田さん、当時は大変お世話になりました。
 私は忘れませんです、あの「展覧会の絵」の衝撃を。先輩から教わった「音楽に命を懸ける」その一音入魂の姿勢を。
 
 なんか「展覧会の絵」について、というより、島田さんの思い出の話になってしまいましたが、お許しください。