2010年2月17日 二期会 東京文化会館
ヴェルディ オテロ
指揮 ロベルト・リッツィ・ブリニョーリ
演出 白井晃
管弦楽 東京都交響楽団
福井敬(オテロ)、大島幾雄(イヤーゴ)、小原啓楼(カッシオ)、大山亜紀子(デズデモナ)、金子美香(エミーリア) 他
指揮者ロベルト・リッツィ・ブリニョーリの音楽が良かった!
至るところに‘ため’と‘間’を作って、歌手からだけでなくオーケストラからも感情、心情を引き出そうとしている。テンポも登場人物のやりとり進行に伴って自在に変幻し、どこを切り取っても同じでない。都響も、指揮に相当揺さぶられたと思うが、よく付いていった。えらい。
演出の白井さんが今回追求したかったことはよ~く分かった。二期会の通信誌にも語っていたが、「人間ドラマ」「人間描写のリアリティ」である、と。
というわけで、オテロの苦しみ、デズデモナの悲しみは本当によく表現されていた。
演出はまさにそこにこだわったのであり、その部分でよく表現されていたのだから、オーケーと言えるかもしれない。
だが、欲を言わせていただくと、「じゃあどうして、オテロは苦しまなければならなかったのか、なぜデズデモナは悲劇に遭わなければならなかったのか」というところまで迫って欲しい。
で、そこまで迫ろうとした場合、必ず「イヤーゴとはいったい何物なのか?」にぶつかるはずだ。そこまで踏み込んで、初めてこのオペラの本質が見える。
歌手ではデズデモナの大山さんが出色。声がなんとなく若い頃のトモワ・シントウに似ていて、そういう意味でもいい感じ。
オテロを歌った福井さんは、第1幕、第2幕と頑張りすぎて、第3幕は少々ばてましたね(笑)。イヤーゴを歌った大島さんについてはやや不満。きれいに響くポイントの音域が狭い。歌詞と歌い出しをプロンプターに頼っていたのもダメ~。
ということで、個々にはそれぞれ思うところがあったけど、総合的には二期会の持てる力を存分に発揮した公演だったと思う。