2010年2月13日 NHK交響楽団定期演奏会 NHKホール
指揮 セミョン・ビシュコフ
ワーグナー トリスタンとイゾルデより前奏曲と愛の死
マーラー 交響曲第5番
ビシュコフの指揮を見ていつも感心することがある。
ビシュコフは常にスコアが完全に頭に入っているということだ。その手の動き、体の動きを見れば分かる。
もちろん指揮者たる者、スコアが頭に入っていなくてコンサートに登場するなんてまずあり得ないだろう。だが、ビシュコフの場合、特に用意周到な準備が整っている様子が見て取れる。
そんなわけだから、ダラダラと音楽に身を任せることは一切なく、全ての音を自ら発し、まさに‘音楽を手玉に取っている’という感じだ。そこらへんに「一流」の片鱗を感じさせる。
彼がリハーサルでどのようにオーケストラに接しているかは分からないが、オケにとっては非常にやりやすい指揮者なのではないかと思う。指揮さえ見ていれば、自然に音楽が創り上がるのだから。
管楽器の些細なミス(N響の場合これがよくある)は置いておくとして、理路整然としたタクトを得てマーラーのスコアを忠実に再現したN響にはとりあえず拍手を送る。
ただ、さすがのビシュコフも、‘スコアに忠実’以上の燃焼をこのオケから引き出すことは難しかったようだ。ま、それが出来る指揮者は滅多にいないが。
ちなみにこの日は、なんと、ソールドアウト公演だったんだって。あのNHKホールが埋まるなんて驚きです。