クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

カルメル会修道女の会話

 私の大好きなオペラ作品の一つだ。
 昨年3月、新国立劇場研修所が主催した公演の鑑賞記で書いた記事に私の思いが凝縮されている。繰り返して申し訳ないがもう一度引っこ抜いて掲載したい。 

『何よりも素晴らしいのはプーランクの音楽そのものだろう。革命さなかの混乱、修道女たちの敬虔な祈り、動揺、不安、おびえ・・・様々な感情の揺れ動きが全て音楽に注ぎ込められている。』

『そして極めつけが最後の場面「サルヴァ・レジーナ」。断頭台に向かい、ギロチンの落ちる音とともに修道女がバタバタと倒れ、一人また一人と声が失われていく・・・こんなにも恐ろしく、また心臓を締め付けられるオペラが他にあるだろうか?私はこの場面、何度聴いても震えが起きる。‘カルメルダイヤログ’は現代オペラ作品の最高傑作の一つと言っても過言ではないだろう。』

 大好きでこんなにも評価している作品なのに、悲しいかな、私はこれまでたったの4回しか実演に接したことがない。(今回の藤原歌劇団の公演も含めて。どうして私の好きな曲って、マイナーで滅多にやらないんだろう?)
 その中では、松本でのサイトウキネンの公演もあるが、何と言っても2004年3月にミラノで見たスカラ座の公演が忘れられない。なんたってこれが、私が敬愛するマエストロムーティスカラ座の黄金コンビで拝むことができた最後の公演だったのだから。

 演出はR・カーセン。いつもの通り、余分な装置を極力排除したモノトーンの舞台で、修道院とその中で生きる修道女たちを‘一般社会のしくみから隔絶した特異なるもの’として描いていたのが印象的だった。
 マエストロムーティの音楽は、もちろん素晴らしかったが、いつものヴェルディモーツァルトに比べるとやや淡泊だったような気がした。


 話は変わるが、私はこのオペラの舞台の地である、フランス・コンピエーニュに行ったことがある。パリ郊外で、電車で1時間程度。王朝時代を偲ばせる宮殿があり、とても美しい街だ。

 私は市のインフォメーションを訪ね、「カルメル会修道院、あるいはそれを偲ぶ場所ってどこかにありますか?」と聞いてみた。
 ところが、当時、私自身カルメル会派及びこのオペラの背景や史実に関する知識は全く無いに等しく、単にプーランクのオペラを知っていただけ。おまけにつたない英語だったし、インフォメーションの係の人も英語が得意でなかったこともあって会話はちぐはぐ。
 説明の理解度30%くらいで、この殉教の物語は小説によって広く知れ渡ったということが辛うじて分かったが、それがここコンピエーニュに存在したのか、現在それを偲ぶ場所があるのかなどは結局分からなかった。残念。