クラシック、オペラの粋を極める!

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新国立劇場の来シーズン

 2010/11シーズンの新国立劇場のラインナップが先月発表になった。

http://www.nntt.jac.go.jp/

 年間の上演目数がたったの10ということで、欧州の主要歌劇場に比べるとやや寂しく、オペラマニアとしては物足りないのだが、日本のクラシック音楽事情と厳しい国家財政状況を冷静に勘案すれば仕方がないところ。新国立劇場が出来るまでは、せいぜい年間3、4演目程度の二期会藤原歌劇団しかなかったわけだから、ここはニッポン国立歌劇場の存在を心から歓迎し、新たなシーズンに上演される10演目のラインナップを眺めながら、期待に胸を膨らませようと思う。

 で、発表された演目をご覧になって、皆さんはどう思いましたでしょうか?

 私の印象は「まあまあ」でした。(つまんない印象でスミマセン)

 新国立劇場の方向性は極めて穏当かつスタンダードであり、初心者にも上級者にも両方共に程よく満足してもらえるような路線を歩んでいることを考えれば、実に「まあまあ」、本当に「お見事!」と言っていいくらいの「まあまあ」だと思います(笑)。

(話はそれるが、日本語には「まあまあ」みたいな曖昧で中間的でどっちでもいいような表現の語が実に便利に使われているなと思う。外国に行くと、こういう曖昧表現が無くて苦慮することが多々あります。)

 2011年2月の椿姫・・・(苦笑)。
 もう、今さら私が何を言っても無駄なのだ。誰が何と言おうと、とにかく、これをレパートリーに入れなければ日本のオペラは始まらないらしい。
 今年、ベルガモドニゼッティ劇場、トリノ王立歌劇場、ロイヤルオペラハウスと続いて、これでもかと散々おなか一杯に食わされても、我々は更に今後も延々とこれを食べさせられるのだ。イヤなら食わなくてもいいという選択権は残されているのだから、とにかく文句を言ってはいけないのだ。は~あ、やれやれ。

 フィガロ蝶々夫人もまたしかり。「初心者さんいらっしゃい」のため、すそ野を広げ新たなファン開拓のため、ここは一言を言いたいのをグッとこらえることとしよう。(え?もう十分一言言っているじゃないかって??スマン)


 最大の注目は、「トリスタンとイゾルデ」のプレミエであることは、大方の異論は無かろう。

 新国立劇場13年の歴史で満を持してついに初登場となるワーグナーの傑作を、大野和士と天才演出家D・マグヴィガーのコンビで提供するとは、いやはや恐れ入った。

 大野和士ブリュッセル・モネ劇場で既にこの曲を採り上げている。「新しい『トリスタンとイゾルデ』を創りたい」という同氏の意向で、当時、まだ世界的には無名だった歌手を登用し、様々な苦難を経てついに成功に導いた秘話がNHKの「プロフェッショナル」という番組で紹介されていたが、その時にイゾルデを歌ったのが、今回もキャスティングされているイレーネ・テオリンである。その後彼女はバイロイトにも出演してイゾルデを歌うなど、一気にスターへの階段を駆け上ったが、まさしく大野さんが発掘したと言ってもいいのではないだろうか。同じく世界的ヘルデンテノール、ステファン・グールドと共に、本当に楽しみである。

 滅多に上演されない演目として、マノン・レスコーアンドレア・シェニエ、アラベッラなどが採り上げられたのは、マニアにとっては嬉しい話。新国立の宝物プロダクションの一つとして末永く保持して欲しいJ・ミラー演出のばらの騎士再演も、シュトラウスファンとして素直に喜びたい。

 ということで、来シーズンはマニアの私にとっては実に「まあまあ」だが、客観的かつ総合的に見れば、程良いバランスで「良くできました!」ということになるのではないか。

 あとはせっかくイギリス音楽が得意な尾高さんが監督なんだから、ブリテンの作品が一つ入って欲しかったが、これはきっと来年以降にお目見えすることでしょう。一番有名な「ピーター・グライムズ」あたりが妥当な線かな。期待してまっせ、尾高さん。