2010年1月9日 メトロポリタンオペラ
R・シュトラウス ばらの騎士
指揮 エド・デ・ワールト
演出 ナサニエル・メリル
ルネ・フレミング(マルシャリン)、スーザン・グラハム(オクタヴィアン)、クリスティン・ジグムンドソン(オックス男爵)、トーマス・アレン(ファニナール)、クリスティーネ・シェーファー(ソフィー) 他
当初は音楽監督のレヴァインが振る予定だったが、落ちてしまい、エド・デ・ワールトに変わった。
この日はハイヴィジョンによるライブビューイングの録画日。(日本でも来月に劇場放映される予定だが、それはこの日のものです。)だから、オケも歌手もそれなりの気合いが入っていたと思うのだが、それでも全体としてぬるい感じがした。高揚感に欠けるのだ。一言で言うと地味。これはやはり指揮者に問題があったと思う。
もう一つ、ぬるさを感じさせた要因がそこにはっきり存在した。
「観客」である。
メトの正体を見たり。アメリカの観客の実体を見たり。
彼らは音楽を聴きに来ているのではなく、お芝居を観に来ている。見た目が一番重要で、シュトラウスの音楽は、彼らにとっては単なる伴奏でしかない。音楽が雄弁に語っているのに、そんなの関係なく、歌手達のおどけた仕草一つ一つ、別に面白くも何ともないのに「うひょひょ!ウッシッシ。へっへっへ。ははは!」と笑う。
なるほど、確かにプログラムに「コメディー」と書いてある。「コメディーなのだから、笑っていいんだ、これは笑って楽しむオペラなんだ。」そう信じて疑わないようだ。
第3幕の一番最後、この曲のハイライト、涙無しで聴けない三重唱と二重唱の後。
感動で体が硬直したっていいはずなのに、モハメットが登場しただけで、あちこちで笑いが起きるという、こいつらの神経は全く信じられない。
こういう連中には、一度、劇薬で「これでも喰らえっ!」と、2001年ザルツブルク音楽祭で上演されたノイエンフェルスの「こうもり」でも見せてやりたいものだ。
歌手について。
私はフレミングは正直言って余り好きではないんだけど、この日は良かったと思った。スーザン・グラハムはちょっとフケましたね。鮮度が落ちている。クリスティーネ・シェーファーの透き通った声が実に素敵でした。