クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2009/12/19 影のない女

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2009年12月19日  チューリッヒ歌劇場
R・シュトラウス  影のない女
指揮  フランツ・ウェルザー・メスト
演出  デヴィッド・パウントニー
ロベルト・サッカ(皇帝)、エミリー・マギー(皇后)、ビルギット・レンメルト(乳母)、ミヒャエル・フォレ(バラック)、ジャニス・ベアード(バラックの妻)、ラインハルト・マイヤー(使者)  他


 「なんという音楽!」「なんという演奏!」

 もう、それしか感想の言葉が見つかりません。
 わたしはあっけなく壊れてしまいました。特に第3幕において、私の涙腺のダムは完全に決壊。体がビクビクと震えるのを感じながら、シュトラウスの目眩く壮大な音楽絵巻に身を委ねていました。

 もちろん大好きな曲だから、というのもあります。私にとって、これほど痺れる作品はありません。
 だけど、この日の最大の貢献は間違いなくウェルザー・メスト。彼は、それこそ作品のツボというのを押さえていて、どこをどのように鳴らせば最大の成果を得られるかを知り尽くしています。

 そしてまた、チューリッヒのお客さんの、メストを迎える拍手の暖かいこと!
 メストはオーストリア人ですが、チューリッヒの人達はきっとメストのことを「わたし達の」と思っていることでしょう。「自分たちがウィーンに送り出した」ことに誇りを持っていることでしょう。だから今回の客演は、「メストさん、おかえり!再びチューリッヒへようこそ!」ということだったのでしょう。
 それはチューリッヒ歌劇場のスタッフにとっても、オケの人達にとっても同じであったに違いありません。でなければ、あんなに完成度の高いプロダクションを生み出せるはずがありません。

 演出のD・パウントニー。
 異論のある人もいるでしょうが、私は彼は天才芸術家だと思います。彼の舞台は、理屈ではなく、感性で創られたモダンアートです。理解しようとするのではなく、何かが感じられればそれでいいと思います。
 第3幕の最後で、彼は登場人物から舞台のための衣装を全て脱がせ、普段着に着替えさせることで、‘人間そのもの’という本来の素に回帰させるという演出を採用しましたが、ベリーグッド、抜群のアイデアでした。

 この公演こそが今回の旅行のハイライトでした。
 いや、ひょっとすると、昨年一年間で最高の感動だったかもしれません。とにかく、とにかく素晴らしかった。ここまで散々な目に遭ってきましたが、これで許してあげてもいいくらいの気持ちになりました(笑)。

 最後に。
 新国立公演で来日が予定されている、皇后のエミリー・マギー。驚きです。こんなにスゴイとは!5月、是非期待してください。