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2009/9/30 読響

2009年9月30日 読売日本交響楽団定期演奏会  サントリーホール
指揮 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
モーツァルト 交響曲第41番 ジュピター
ショスタコーヴィチ 交響曲第11番 1905年


 ミスターSことスクロヴァ大先生に対し、読響は「桂冠名誉指揮者」の称号を贈ることにしましたとさ。それはそれで良い事。文句は言いません。

 だが、読響の指揮者陣、ちと多くありませんか?
 常任指揮者や正指揮者はまだいい。だが、さらに名誉指揮者や桂冠指揮者らも加えて7人もずらりと並んでいるのを見ると、「要するに、オケのハクを付けようとする魂胆ありありか?」と勘ぐりたくなる。実際そういうことなんじゃないの?

 と、一言毒づいたところで、昨日の公演の話にします。スクロヴァ先生、相変わらずかくしゃくとしていて、大変元気であります。喜ばしいことであります。

 一曲目のモーツァルト
 とてもユニークな演奏。独特のアーティキュレーションによって、耳馴染んでいるヴァイオリンのメロディに、木管楽器がうまく溶け込む様子が観察できる。マエストロの指揮に読響もよく反応し、健闘。一曲目からしっかりとブラヴォーが飛び交いました。

 メインのタコ11。何度聴いても鳥肌の立つ壮絶な大作。
スクロヴァ先生は一曲目とはうって変わり、時折の指示の際に顔を上げるだけで、それ以外はスコアにかぶりつき状態。もちろん曲が頭に入っていないということではなく、慎重にタクトを振らないと音楽が崩壊してしまうと考えてのことだろう。

 だが、その心配は無用だ。
 なぜなら読響が万全の体制でマエストロの音楽にくらいついているからだ。
トランペットの何カ所かのひっくり返りはご愛敬として、基本的に読響の高い技術水準が最大限に発揮され、本当に素晴らしい名演が生まれた!(読響の2009年シーズンのハイライトになるかも!)

 スクロヴァチェフスキさんは、生まれは当時のポーランド、現在のウクライナという、祖国の名が戦争の犠牲によって変わってしまったことや、亡命といった経歴を有する。そういう苦しい時代を過ごした人生が、「革命」「民衆の嘆き」「抑圧」「祈り」「希望」「警鐘」がテーマとなっている11番の音楽創りにおいて何らかの影響を及ぼしているに違いない。仮にそうでないにしても、そう聞こえるほどの強いアピールがある。

 終演後のマエストロの笑顔と、読響団員の達成感に満ち溢れた満足げな顔は実に爽やかであった。

 指揮者への称号の大安売りは眉唾物だが、スクロヴァ先生の「桂冠名誉指揮者」に関してはまさに本物に対する敬意そのものであると言えましょう。