クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

1995/5/28 モナコ 3

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 5月28日モナコ。F1グランプリ決勝。
 本日の観戦は、前日の予選でモンテカルロ港を眼前に望む席とはまた別の、スタートして最初のコーナーを高台から見下ろす場所であった。美しい港はもちろん眺められるし、悪くない。

 F1ではどのサーキットでも、スタートして一気に加速した各車が一斉にカーブに飛び込んでいく第一コーナーは熾烈なポイントである。数少ない抜きどころ、そして0.001秒を争う戦いのため、カーブを曲がる際に必要なブレーキのタイミングを出来るだけ遅くし、最短最速のコースラインを確保しようと猛烈にせめぎ合う。必然的に接触、衝突などのトラブルが起こりやすい。

 何かが起きる予感。その予感は的中した。

 スタートのカウントダウン。各車一斉にエンジンの出力をマックスに。昨日の予選を上回る爆音炸裂。轟音と共に約20台のマシーンが我々の眼前に飛び込んできた。先頭はポールポジションを奪ったベネトンシューマッハー。最初のコーナーはシューマッハーが死守した。ところが、そのコーナーを無事に抜けることが出来たのはわずか3、4台だった。

あっっ! ぶつかった! 衝突だ! クラッシュだ! 二重衝突、三重衝突! マシーンにマシーンが乗り上げる! 破片が飛び散る! タイヤが外れる! 逃げ場を失った後方車両が大渋滞! 係員が一斉に注意を警告するイエローフラッグを振り回す!

観客が一斉に立ち上がった! 場内は騒然だ!

レース続行不能! レッドシグナル! 中断だ!

整備係員が続々と集まってくる!
クラッシュした何台かのマシーンは万事休す! 一周も回ることが出来ずレースを終えた! 乗っていたドライバーは危険を回避すべく走ってコースから外れる! 整備係員が大声を出しながら壊れたマシーンを移動させる! クレーンが出てきたぞ! マシーンを釣り上げ、撤去だ!

(全部のセンテンスにビックリマーク(!)を付けましたが、迫力は伝わりましたでしょうか?(笑))

「あわわ、あわわ・・・」
立ち上がって、ただただ呆然と事態を見守る我々。心臓のドキドキが止まらない。

いやあ・・・すんごい!
サーキットに集まった何万人もの大観衆の中で、この一部始終を生で目撃出来たのは、この第一コーナーの席に陣取った人だけだ。これはラッキーだった。

 20分ぐらいの中断があったであろうか。その間にコースは再整備され、レースはやり直しとなった。もう一度最初から。なんかスタート時の興奮をもう一度味わうことが出来て、得した気分である。

 再スタート。今度は各車とも事故なく無事に第一コーナーを抜けていった。だが、このコーナーはちょっとでも気を抜こうものなら、途端にドライバーに牙を剥く。
 目の前で青い車のエンジンが止まった。リタイアだ。手を挙げて「どうすることもできない!」とのジェスチャーをしているドライバー。覗き込むと、なんと片山右京であった。Kくんが「うきょぉ~!!」と叫んでいる(笑)。決して優勝を狙う大物ではないが、そのアグレッシブな走りから「カミカゼウキョウ」とあだ名されていた日本代表も、万事休す、これまで。

 こうやって、目の前でリタイアが起これば、まだいい。だが、事故はどこの箇所でも起きる。テレビだったら、これらの情報は逐一映像付きで報じられる。だが、生観戦では分からない。ましてや海外だ。いちおう場内はスピーカーで実況されているが、外国語だもんな。わかんない。
 周回を重ねながら、いつのまにかマシーンが欠けていることに気付く。「あれ?そういえばマンセルいる? いないよね? どうしちゃったの?」ってな感じ。

 それとね。スタートして最初の方こそ、各マシーンがデッドヒートを繰り広げながら一群固まって走っているので、順位がはっきり確認できるのだが、そのうち早い車が遅い車を周回遅れにし出すと、固まりがばらけてどこが先頭だか分からなくなる。実況放送と、観客の反応で、シューマッハーが最初から依然としてトップをキープしていることは分かるが、それ以下はもう何がなんだか分からない(笑)。
 こんなこといっちゃナンだが、テレビの方が分かりやすいのだ。我々はただ、眼前を「ヒューン、ヒューン」とマシーンが通過していく様をぼーっと眺めているだけになってしまった。ちょっと、あの、その、そろそろ・・飽きて、きちゃった・・かな?(^_^;)

 レースも終盤、残り2、3周となった。
 シューマッハーの首位は万全かつ盤石。優勝は間違いないだろう。時間は午後5時を回り、私は帰りの電車が気になり始めた。
 もしこの10万人を越える大観衆が帰路につくため一斉に駅に向かったらどうなるであろうか?モナコの駅は非常に小さい。そこらのローカル駅と同じだ。ホームに入れなくなるのではないか?そうじゃなくても、この日の朝、我々は呆然と立ちすくむかのようなひどい目に遭ったのだ。「予期せぬトラブルに巻き込まれて帰れませんでした。」では済まされない。明日は早朝に帰国なのである。

 Kくんに声を掛けた。「そろそろ帰る?」
 Kくんも同じことを考えていたのではないだろうか。二つ返事で「そうしましょか。」
駅に向かいながら、まだ続いているマシーンのエグゾーストノートを聞き、余韻に浸った。

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 この旅行は、私がこれまで何十回と旅してきた中でも、思い出深く楽しかったという意味で指折りです。こうやって、無事にブログに全てをまとめ上げることができて、感無量です!