クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2009/8/11 大野和士オペラレクチャーコンサート

2009年8月11日 大野和士のオペラレクチャーコンサート  神奈川県立音楽堂
大野和士(レクチャーとピアノ)
文屋小百合(ソプラノ)、西明美メゾソプラノ)、松村英行(テノール)、笛田博昭(テノール)、西村悟(テノール)、須藤慎吾(バリトン)他
チレア  アドリアーナ・ルクヴルール第2幕より
レオンカヴァッロ  道化師第1幕より
ヴェルディ  アイーダ第4幕より
マスネ  ウェルテル第3幕より
ヴェルディ  オテロ第2幕より


 指揮者や演奏家が作品をどのように解釈し、どのように仕上げるかを伺い知る最も手っ取り早い方法は、リハーサルなどの現場を覗き見ることだが、一般ファンにとってそういう機会はなかなか得られない・・・なんてことを、ちょうど前回ブログの大島莉紗リサイタル鑑賞記で書きました。ご丁寧に「私はこう解釈しました」なんて口頭で説明してくれることなどないのだ。「成果を聴いてくれ。それが全てだ。」と言われれば、全くもってその通りである。

 ところが、なんと「マイクを持って解説しながら演奏を聴かせてくれる」という非常にありがたくも貴重な場を提供してくれる指揮者がいる。それが世界を股に掛けて活躍するマエストロ大野和士だ。

 オペラを中心として活躍する氏だけに、題材はオペラ作品から。テーマを絞り(今年は『嫉妬』)、作品、旋律、伴奏などに潜む「意味」について解析し、披露する。普段何気なく聴いている音楽に、「そういうことだったのか!」という発見を与えてくれる、それはそれは楽しいコンサートだ。

「ここの旋律は明らかにワーグナーの影響が見て取れます。ほら、こんな感じで・・・」

「6度の上昇音は、届きそうで手にすることの出来ない気持ちを表す際によく使われる音型で、例えば他の作品で言うと・・・」

「主人公の気持ちが、ここの転調部分によってはっきりと切り替わりました。」

「ここの重苦しげな旋律と、キラキラした旋律、これはまさにドロドロした嫉妬の部分と、それでもなおその人を愛している少女の初恋のような気持ちが入り交じっているわけです。」

 こんな感じで説明しながら、なおかつ歌手に歌わせ、自らピアノを弾いて提示してくれるのだから、分かりやすいったらありゃしない。

 このコンサートは昨年に引き続いて2回目ということだが、おそらく前回が大好評だったことを受けてのアンコールだろう。チケットもあっという間に売り切れ、満員御礼だった。

 大野和士は、以前東フィルの「オペラコンチェルタンテシリーズ」で、毎回のようにプレトークをしていたが、その時も分かりやすい語り口で好評を博していた。
 また、3年前の2006年1月に昭和音楽大学オペラ研究所主催の公開講座で、やはり歌手を使いながら、自ら解説しつつ、音楽を創り上げるその過程を見せてくれた。指揮者が歌手に何を要求し、それによって音楽がどう変わるかが手に取るように分かって、大変面白かった。

 上記の公開講座に比べると、今回のオペラレクチャーコンサートは、どうしても作品のストーリーの説明が多くなってしまい、それらを最初から知っている私にとってはやや残念。(もっとも、ストーリーをしっかり理解をしてもらってこそ、多くの聴衆に説明が行き届くわけで、これはやむを得ないことである。その点は私も理解します。)

 楽しい話術で観客を一気にオペラワールドに連れ込む大野氏。本人も楽しんでやっている様子。来年以降も続いていくのではないかと推測する。まだご覧になっていない方、是非足を運んでみてはいかが?