2024年11月1日 ザクセン州立歌劇場
R・シュトラウス インテルメッツォ
指揮 パトリック・ハーン
演出 アクセル・ラニッシュ
クリストフ・ポール(ロベルト・シュトルヒ)、マリア・ベングッソン(クリスティーネ)、ジェームズ・レイ(ルンマー男爵)、ウタ・セルビッヒ(アンナ)、ベルンハルト・ハンスキー(公証人)、ザビーネ・ブローム(公証人の妻) 他
ドレスデンにやってきた目的が、これ。自分にとって見逃せない、今回の旅行の中でも特に重要な公演の一つであった。
理由を説明する。
この「インテルメッツォ」の初演地は、ここザクセン州立歌劇場(旧宮廷歌劇場)である。1924年11月。つまり、今月で100周年なのだ。
ゼンパー・オーパーは、当劇場で初演された本作品の100周年を記念し、このたび新演出を制作した。
で、この日がそのプレミエ初日、というわけ。
私はシュトラウス・マニアであり、この作品も大好き。だというのに、とにかくなかなか上演されないレア演目。だから、この機を逃してはならん、これは絶対に行かねばならんと、馳せ参じた次第。
作品について簡単に紹介すると、R・シュトラウス自身の家庭で起こった実話について、自ら脚本を手掛け、そして作曲した。
登場人物のロベルト・シュトルヒは宮廷指揮者で、これがリヒャルト・シュトラウス。クリスティーネは彼の妻で、実際はシュトラウスの奥さんのパウリーネ。
この二人の他愛もない夫婦喧嘩といざこざ騒動によるエピソードが物語になっている。
今回の新制作の舞台では、演出上、歌手が担当するロベルト・シュトルヒ、クリスティーネの他に、R・シュトラウスとパウリーネの本人役が登場、これらを俳優が演じた。
演出によって創作された舞台上のお話としては、次のとおり。
R・シュトラウスが新作オペラ「インテルメッツォ」を完成させ、ついに上演の運びとなった。初演を鑑賞するため、劇場(つまり、ゼンパー・オーパー)に奥さんパウリーネを伴って入場、二人で仲良く桟敷席から観劇。
ところが、パウリーネは、そこに自分自身の役が登場し、しかもパロディのように面白おかしく描かれていたことで気分を害してしまい、途中で桟敷席から退席。慌てて後から追いかけてくるシュトラウスと共に、実際の舞台に上がり込んで、ストーリーに関わっていく、みたいなドタバタ展開。
着眼点が秀逸。ナイスなアイデアだ。
また、舞台機構の昇降装置をフル稼働させて場面転換を図ったり、昔の無音声モノクロ映画のような映像も取り込むなど、視覚的に飽きさせない工夫が満載で、実に楽しい。
演出の妙味、歌手や俳優たちの熱演もさることながら、この日の上演で出色だったのが、ピット内から沸き立つザクセン州立歌劇場管弦楽団(シュターツカペレ・ドレスデン)の極上の演奏!
上手くて、ゴージャスで、濃厚な香りで、本当にしびれた。
(元々、作品の中に間奏曲がふんだんに盛り込まれているので、オーケストラが大活躍。まさにシュトラウスの面目躍如なのだ。)
ということで、ここは一つ、華麗なる演奏を導き出した指揮者:P・ハーンを持ち上げ、称えよう。
ハーンは、ヴッパータール市立劇場音楽総監督のほか、ミュンヘン放送管の首席、イスタンブール・フィルの首席客演、スコティッシュ・ナショナル管の首席客演など、多数のポストを持つ逸材。日本では新国立劇場の「こうもり」を振ったことがある。なんと、ジャズ・ピアニストとしての顔も持っているのだとか。なかなかの異色。
さて、幕間の休憩中のこと、出演者であるR・シュトラウスとパウリーネの本人役を務める俳優さんが、なんとロビーに現れ、お客さんたちに愛想を振る舞っていて、びっくりした。
別に私の方から近寄ったわけじゃないんだけど、たまたまその二人が自分の目の前を通り過ぎようとしたので、「あのー、すみません、写真いいですか?」と思わず声を掛けてしまった。そしたら、「もちろん、喜んで!」みたいに、バッチリとポーズを取ってくれた。
当日キャスト表にも、ちゃんとお名前が掲載されている。
シュトラウス役:エリック・ブリュンナーさん、パウリーネ役:カタリーナ・ピッテルコウさん。
どうもありがとうございました。