クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

1990/11/24 ラ・ボエーム

1990年11月24日  ウィーン国立歌劇場
プッチーニ  ラ・ボエーム
指揮  シルヴィオ・ヴァルヴィーゾ
演出  フランコ・ゼッフィレッリ
ルイス・リマ(ロドルフォ)、ジョアンナ・ボロウスカ(ミミ)、パトリシア・ワイゼ(ムゼッタ)、ゲオルグ・ティッヒ(マルチェッロ)、マンフレート・ヘム(ショナール)、ゴラン・シミッチ(コルリーネ)   他


人気演目、初心者向けの定番、「ラ・ボエーム」。
もし今なら、わざわざ海外に行ってまで観ようとは、決して思わない。そもそも「これをやってりゃ、お客は喜ぶし、安泰」とばかりに軽々しく上演目に取り上げようとする風潮が私は嫌いだから、「椿姫」と「ボエーム」は基本観ない。海外旅行計画の中でこれらの上演を見つけたとしても、しれっとスルーして、別の場所で他に何かやってないかを探す。

今なら、ね。

当時、ワタクシ初心者でございました、ハイ。
映像(レーザーディスク)で観た英国ロイヤル・オペラ・ハウス上演ライブ(1982年)のボエームはめっちゃ感動したし、涙ポロポロこぼしましたっけ。
だから、憧れのウィーンでこの演目を観られることを、大いに喜んだのであった。
もちろん、本公演が私のボエーム初体験。
本当なら自慢したいところなんだけどね。「オレっち、初ボエームはウィーンだったぜ!」ってな。
でもね。
私は、クライバーが振ったスカラ座の来日公演を逃しているのであった。
クライバーのボエームに勝るものはない。「ウィーンで観た」自慢なんか、あっという間に霞んでしまうわけさ。


実はもう一つ、本公演で厳しい現実の壁というか、手痛い洗礼を受けたことがあった。
主役の降板、キャスト変更である。
当初、予定されていたミミ役は、イレアナ・コトルバシュであった。
コトルバシュ・・・上記のロイヤル・オペラ・ハウス映像で、彼女がミミだった。だから、実際にウィーンで彼女のミミを生で聴けるというのは、ものすごく楽しみだった。

この時、まだこうしたキャストのドタキャン変更には不慣れで、「まさか!?」みたいにショックだったが、その後、ドタキャンはオペラ界において日常茶飯事であることを身をもって思い知り、やがて何度も痛い目に遭っていく。恐ろしいことだ。

代役で出演したボロウスカは、当時はもちろん、今もまったく知らないが、ネットで検索してみたら、1986年のROH来日公演の「カルメン」で、ミカエラ役で来日していたとのこと。
また、アバドウィーン国立歌劇場と収録し、録音盤として残っている「ホヴァンシチナ」にも名前が出ている。
ウィーンでの公演の印象は、コトルバシュ降板のショックもあってか、まったく記憶に残っていないのが残念だ。

対象的に鮮烈な印象を残し、今でも覚えているのが、ロドルフォのリマ。
美しく、朗々として、張りのある声。ラテン系らしい情熱的な歌いっぷり。
ああ、さすが。こういう上手い歌手が登場してくるのが、ウィーン国立歌劇場というわけだな。
何だかリマというより、一流歌劇場の格、威力に感服したのであった。


ゼッフィレッリの舞台も息を呑むくらい美しかった。
有名な第二幕の群衆シーンもスペクタクルだが、私が魅了されたのは第三幕。しんしんと降り積もる雪景色のセットに目を奪われた。

ゼッフィレッリは、メトロポリタンオペラとスカラ座でもボエームを手掛けている。ご存じの方、これらの公演をご覧になった方もいらっしゃるだろう。基本的なコンセプトは同じだが、舞台の作りは微妙に異なっている。共同制作でなくオリジナルなのであれば、それは当然のことだろう。