クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2022/8/22 草津国際アカデミー&フェスティバル(A・キルヒシュラーガー リサイタル)

2022年8月22日  草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル
アンゲリカ・キルヒシュラーガー メゾ・ソプラノリサイタル  草津音楽の森国際コンサートホール
クリストファー・ヒンターフーバー(ピアノ)
シューベルトブラームスシューマン、R・シュトラウスマーラーの歌曲集より


今年で42回目を迎えるという日本の音楽祭の老舗、草津アカデミー&フェスティバル。
私がこのフェスティバルを訪れたのはこれで2回目。
だが、最初は20年くらい前、温泉目的で家族で訪れたところ、たまたまやっていたので「じゃ、聴いたろ」みたいな感じで当日券を買った、ただそれだけだった。室内楽だったが、プログラムは何だったのか、出演者は誰だったのか、全然覚えていない。アーカイブを探せば調べられると思うが、別に調べたいとも思わない。

一方で、かつてこのフェスティバルに行くべきか、真剣に検討したこともある。
それは、ドイツのソプラノ、ヒルデガルト・ベーレンスが来日し出演した時であった。

私が生涯で最も敬愛する歌手、ベーレンス。であるが故に、躊躇した。行く決断が出来なかった。
既に第一線の舞台からは事実上退いていた彼女。そんな彼女の歌声に少しでも衰えを感じ、万が一にもがっかりしてしまうなどということはないか。これがこの上なく怖かった。それだけは絶対に嫌だったのだ。
まさか、そこで病に倒れ、日本で亡くなるなんて・・・。
あの時、やっぱり聴いておくべきだったのだろうか・・・。


そういうことで、私にとって実質的に初めてと言っていい草津フェスティバル。
キルヒシュラーガーをお招きしたとは、やるじゃないですか。平日だけど、お休み取って、温泉兼ねて、行くとしましょうか。

少し前、2000年代。彼女はウィーンの花だった。国立歌劇場に欠かせない重要な歌手として、飛ぶ鳥を落としていた。
私と同世代。今、ベテランの域に入っているが、第一線から遠のくのはまだ早い。今回は、そんな円熟した彼女の現在の立ち位置を知る良い機会と言ってよさそうだ。
ちなみに、フェスティバル事務局によると、日本でのリサイタルは初めてだそうである。

プログラムを見渡す。ドイツ系作曲家の作品で占められている。
さすが。やっぱりそうきたか。

2か月前、同じメゾのガランチャが来た時、彼女が用意したプログラムはドイツ物、フランス物、ロシア物、スペイン物と多彩だった。
これに対し、キルヒシュラーガーは、シューベルトからマーラーまでの系譜を辿り、ドイツというカテゴリーの中でそれぞれの作曲家の魅力を浮き彫りにさせるアプローチである。

歌唱上で際立っているのが、歌詞の発音だ。ドイツ語の響きが美しい。「ドイツ語を母語としているから当たり前」と単純に片付けることが出来ない奥深さ。旋律に乗って、ドイツ語がキラキラと輝いている。
よく歌唱において「イタリア語が最適」と評されるが、「ドイツ語こそ歌に適しているのでは」と、思わず納得してしまうほど完成された発音の響き。その魅力をキルヒシュラーガーが聴衆にしかと伝えていた。


最後に、演奏とは別のところでイライラしたことを。
私の二つ隣りの席の男性が、しきりに演奏に合わせて両手を動かしていた。
さすがに振り回すほどではないものの、クラシックのコンサート会場ではちょっとした動きでも、それが視界に入ると、邪魔で集中を削がれるものである。

こういう目障りなことをやろうとする連中の気が知れないと言いたいところだが、いや、分かる。お見通しだ。「心が動いて、つい自然に手も動いてしまう」なんてのは大ウソ。
「オレは作品もよく知ってるし、演奏家の音楽も手に取るように理解できる」みたいな周囲へのマウント、ひけらかしだ。
こういうヤツ、時々いるが、本当にうぜー。
(5列目の中央付近にいたアンタ。アンタのことだよ。)