別府アルゲリッチ音楽祭が無事開幕し、3年ぶりにアルゲリッチのピアノ演奏が大分の地で鳴り響いたようだ。
その前に、既に東京公演と水戸公演も先行で開催されていて、シューマンのピアノ協奏曲を披露している。私はこれらには行かなかったが、すっかり聴衆を魅了した模様で、嬉しいニュース。今度の28日(土)の大分公演、それから6月6日(月)のクレーメルとのデュオコンサート(サントリーホール)に駆け付ける予定。
今年のアルゲリッチはスペシャルと言っていい。
それは、大分でも、それからクレーメルとのデュオ公演でも、それぞれにアルゲリッチのソロ演奏のプログラムが組まれているからである。
周知のとおり、アルゲリッチはもう随分と昔から、ソロを弾かない演奏家になっている。
コンサートは、コンチェルトか、デュオリサイタルか、室内楽のみ。「単独ソロ・リサイタルを聴きたい」という聴衆の夢、願いは決して叶えられない。
しかし、稀に、コンサートの中で、ほんの一部ソロを弾くことがある。滅多にないことだが。
(コンチェルトの後、アンコールでソロの小品を弾いたこともある。)
過去の別府音楽祭では、そうしたプログラムが組まれたことが何度かあって、地元ファンを狂喜させた一方、遠方のため駆けつけられないファンは地団駄を踏んだものだ。
私自身、正規のコンサートのプログラム(アンコールとかでなく)でアルゲリッチのソロを聴いたのは、これまでにたったの1回しかない。
1989年9月。スイスのモントルー・ヴェヴェイ音楽祭。なんと単独のソロ・リサイタル。
このコンサートを目的として訪れたのではなく、ツェルマット(スイスアルプス)に行こうとしてジュネーブから途中モントルーに立ち寄ったら、偶然公演をやっていた。なんというラッキー。
そういうわけで、今回は33年ぶり、日本でアルゲリッチの正規プロのソロを聴く大チャンスの到来なのだ。しかも、そのチャンスが2度ある。
もっとも、披露してくれるのは、何度も演奏している得意の作品ばかり。ある意味ワンパターン。目新しさはまったくないが、文句は言えない。ソロを弾いてくれるだけで十分に「ありがたや」というわけだ。
ちなみに、演奏曲は事前に発表されていない。大分・別府では「シューマンの『子供の情景』か、またはバッハの『パルティータ第2番』」。クレーメルとの公演では「曲目未定」。
22日の別府公演では、当日になってもなお何を弾くか会場で知らされず、アルゲリッチが実際にステージに登場して演奏して、そこで初めて聴衆は「バッハか!!」と知ったとのこと。
なんじゃそりゃ! 信じられん。そんなのありかよ。
普通ならあり得ないが、アルゲリッチ様なら「有」なのである。
なぜなら、アルゲリッチ様は神様だからだ。
神様なら何でもあり。決して文句を言ってはいけまへん。
果たして今度の28日は、シューマン、バッハ、どっちを弾くのか??
22日と同じバッハなのか、それとも「次は違う曲」ということで、シューマンなのか。
うーん、楽しみである。
個人的には、「子供の情景」よりも「パルティータ第2番」の方が好きなので、そっちをやってほしいが・・・おっといけねえ、神様におねだりをしてはいけないのであった。