クラシック、オペラの粋を極める!

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ロシア人音楽家への逆風

世界が一斉に反ロシアの声を上げる中、ロシア人音楽家に対する逆風も当然のごとく吹き荒れている。

特に、ゲルギエフ。相当ヤバい。

ウィーン・フィルNY公演から急遽降板させられたと思ったら、その後、ミュンヘン・フィル、ロッテルダム・フィル、ヴェルビエ音楽祭などにおける監督ポストをあっという間に解かれた。また、バイエルン州立歌劇場、メトロポリタン・オペラ、ミラノ・スカラ座などでも、出演予定をキャンセルされた。完全に三くだり半を突き付けられた形で、窮地に陥っている。

情報によれば、幾つかの団体からは政権と距離を取る意思を表明するように促されたというが、彼はこれに応えなかったという。ならば当然の帰結であろう。ゲルギエフも自らの信念を貫いたわけで、覚悟の上だったのではないか。

ゲルギエフがロシア政権と近しく、プーチン大統領とも懇意の仲であることは、以前からよく知られていた。
政権は、その絶大な人気と世界的知名度を利用しようとする。ゲルギエフだって、政府の後ろ盾を得て国内の音楽界において圧倒的優位に立つことができる。かくして両者は結び付く。当然の成り行きだ。

そういうわけだから、ゲルギエフからしてみれば、戦争反対の態度を表明することはいわば手のひら返しであり、裏切り行為に等しい。政権から怒りを買い、名誉と権力が剥奪され、自国内での活動制限や失脚に繋がりかねない。下手をすれば自身や家族を危険に晒す可能性もある。真意は別にして、したくても出来なかったのかもしれない。

私としては、ゲルギエフにとって苦渋の決断であり、表明はできないけど、本当は、心の中では心を痛め、戦争に反対し、早期に終結することを祈念していると信じたい。

世界中を駆け巡って指揮をしていたゲルギエフ。日本への来日回数も非常に多い。主要指揮者の中でダントツではなかろうか。それだけ日本のクラシック演奏界に貢献していたのである。だから、好きか嫌いか良いか悪いかは別として、このような処遇は個人的に残念でならない。

ただし、客観的に見て今後しばらくは西側での活動はアウトだろう。これはもう仕方がないことなのだ。


ゲルギエフ以外のその他のロシア人音楽家はどうなるのだろう。

ネトレプコは、明確な反対表明を濁しつつ「平和を祈念」みたいな発信を行ったが、バイエルン州立歌劇場やメトロポリタン・オペラなどは彼女をあっさり締め出してしまった。(もっとも、ネトレプコはその前に「当面休養」を発表していたが。)
ユロフスキやK・ペトレンコなどは、活動の拠点、軸足が西側諸国にあり、戦争反対の態度を打ち出している。

さて、そんな中、東京フィルを振るためにM・プレトニョフが来日した。よくまあ日本政府は彼にビザを出したものだが、それはさておき、彼が指揮をするコンサートに、我々はどのような気持ちで臨んだらいいのだろう。
我々はロシア人に対し、その都度自身の立場や意思を問い質し、いちいち踏み絵をさせた上で、付き合っていかなければならないのだろうか。
そうするべきなのか。それでいいのか。

わからん。