2022年2月23日 辻彩奈ヴァイオリンリサイタル 浜離宮朝日ホール
モーツァルト ヴァイオリンソナタ第40番
フォーレ ヴァイオリンソナタ第1番
ラヴェル ヴァイオリンソナタ第2番
サラサーテ ツィゴイネルワイゼン 他
演奏の話の前に、プログラムの最後を飾ったツィゴイネルワイゼンについて。
誰もが知っているヴァイオリンの超名作、なんと、私はこれまでコンサートで聴いたことがなかった。ウッソだろ?って感じ。
いや、正確に言うと、「正規のプログラムの中で」という注釈が付く。多分アンコール演奏で聴いている。記録しているコンサート・データベースにはないが、記憶にはなんとなくあるのである。いつ、どこで、誰かは忘れたけど。
いずれにしても、いわゆる「名曲コンサート」といったものに足を運ばないと、こういうことが起こる。
例えば「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、これまで人生でたったの一回しか生で聴いたことないし、「ペール・ギュント」も昨年10月にブロムシュテット指揮のN響でやったのを聴いたのが、ようやく初めてだった。
そういえば、有名な日本人ヴァイオリニスト、故:辻久子さんとか前橋汀子さんとか、彼女たちがリサイタルでいつも定番のようにツィゴイネルワイゼンを採り上げていたのを知っているが・・・オレ行かねぇからなあ・・。
まあいいでしょう。
さて、辻彩奈さんの話に戻そう。
配布されたプログラムだと、「辻」のしんにょうは点一つになっているけど、どっちが正しいのでしょうね。ワープロ変換だと点一つの方は出てこないが。
えー、それもまあいいでしょう(笑)。
とにかく辻さん現在大活躍中。私も昨年11月の山響公演で初めて聴き、その時すっかり魅了されたので、今回リサイタルに出かけてみた。
結論を言う。やはり素晴らしいヴァイオリニストだ。
若いけど、既に完成された貫禄がある。技術が確かなのはもちろんだけど、それよりも、いかに作品の中に潜り込み、捉え、表現するかに特化したような演奏なのだ。だから、辻さんを聴こうと身を構えているのに、いつの間にか演奏家の存在が消え、モーツァルト、フォーレ、ラヴェルといった作曲家が浮かび上がり、音楽そのものが聞こえてくるのである。
これ、褒め言葉の最上級。
この成果、ピアニストの福間さんの貢献度も非常に大きいとみる。
聞けば、当初予定の外国人ピアニストが来日できずの代役だったという。
だけど、ピンチヒッター感ゼロ。
実際どのように二人が演奏を組み立てていったのかは知る由もないが、お互いがお互いの演奏に合わせたというよりも、それぞれが作品に向き合って演奏してみたら見事に方向性が合致した、みたいな感じに私は聴こえた。音楽的センスの相性が抜群に良かったのだと思う。偶然たまたまかどうかは別として。
そうやって考えると、リサイタルを行うにあたり、いかに伴奏者が重要なのかが改めてよく分かる。辻さんはこうして素晴らしい代役ピアニストを得て公演の実現に結びつけたが、メゾの藤村さんは、伴奏ピアニストの代役はありえないとして、公演をキャンセルした。
「テキトーに日本人ピアニスト探してやればいいじゃんかよ」なんて不届きな思いを募らせてしまったが、そういうものじゃないんだろうね。
ヴァイオリニストとピアニストの双方に実力と知名度が備わっていると、公演のタイトルは「デュオ・リサイタル」となる。
今回の公演も、そのように銘打っても決して遜色ないだろう。
それだと福間さんは恐れ多く、辻さんは内心不満かな?(笑)