2021年7月4日 東京フィルハーモニー交響楽団 オーチャードホール
指揮 チョン・ミョンフン
ブラームス 交響曲第1番、第2番
チョン・ミョンフンが東京フィルのスペシャル・アーティスティック・アドバイザーに就任したのが、2001年。つまり、共に歩んで20年、ということになる。
今回の公演(この日だけでなく、東京オペラシティホール、サントリーホールでも行われた一連の定期公演)は、その強固な絆が実を結んだ最高の結晶と言えるのではなかろうか。両者の幸福な関係は、ついにここに極まったのだ。
揺るがぬ信頼の証がはっきりと見え、そして聴こえた。
もちろんリハーサルの段階から厳しく練習を積み上げ、着実に音楽を構築させて、その上で完成させた結果なのだと言えば、確かにそうだろう。
でも、チョン・ミョンフンの指揮を見ていると、なぜかそのように見えない。オーケストラにあれこれ指示を出して音を作ったという感じではないのだ。
あたかも、指揮者が頭の中で描く理想の音形を求め、目を瞑りながら手を動かした時、その懐の中から音楽が自然と湧き出てくるかのよう。
まさに神秘。これぞ芸術の奥深さ、創造の賜物なり。
もしかしたら、ここまで到達するのに20年を要した、と言えるかもしれないが。
それにしても、なんて自然体なブラームス。
聴こえてくるのは、演奏家の解釈が注入されたブラームスではなく、素の作品そのもの。素朴で、等身大で、どこか懐かしい。こんな純真なブラームスを聴いたのは、いったいいつ以来だろう。
いや、もしかしたら、初めてかもしれない。
私が初めてチョン・ミョンフン指揮の公演に足を運んだのは、2002年1月の東京フィル。
つまり、スペシャル・アーティスティック・アドバイザー就任の翌年だ。
その時のプログラムは、ブラームスだった。(ドッペル・コンチェルトと、メインがブラ4)
なんてことだ。まるで、原点への回帰ではないか。
そのブラ4を、今度は9月に聴くのだ。待ち遠しい。