2002年4月30日 UEFAチャンピオンズリーグ準決勝セカンドレグ第1試合
バイヤー・レヴァークーゼン 対 マンチェスター・ユナイテッド
プラチナチケットともいうべき観戦チケット。旅行前、一番気がかりだったのが、「受け取りに指定されたホテルのレセプションで、ちゃんと受け取ることができるのか?」だった。なんだか、不安だったのである。
ホテルの人に尋ねて、「は?? そんな物、預かってませんけど?」なんて言われたら、どうしよう?
こういうことって、海外旅行で、ヨーロッパで、ありがちなのだ。
結論から言うと、チケットはきちんとホテルに届けられていて、私は無事にチケットを手にした。良かった良かった。
そのホテルには、どうやらイギリス人の宿泊予約が殺到した模様。「さて、それではスタジアムに出かけるか」と思って部屋を出、ロビーに降りると、そこはユナイテッドサポで溢れていた。ざっと20人くらいはいた感じ。
ということで、私はそいつらと一緒に連れ立ってスタジアムに出発(笑)。
(スタジアムは、ホテルから徒歩圏内の場所だった。)
なんか親近感が湧いちゃって、「それじゃあ、今日は私もユナイテッドを応援するかなあ?」なんて思いながら。
普通に考えれば、「ユナイテッドを応援する」ということは、「勝ち組に乗っかる」ことを意味する。
当時の実力や実績、格を考えれば、そういうことだろう。
ところが、この日の状況は、微妙に違う。
一週間前、マンチェスターで行われたファーストレグの試合で、両者は壮絶な試合を繰り広げ、2対2で引き分けた。
この結果は、両者にとってイーブンではない。
レヴァークーゼンに、アウェイで獲得した2ゴールがずしりと効いている。0対0、あるいは1対1の引き分けなら、レヴァークーゼンが決勝に進む。
つまり、マンチェスター・ユナイテッドは、この日、アウェイの地で、是が非でも勝ちに行くしかないのである。
レヴァークーゼンの本拠地、バイ・アリーナに到着した。
コンパクトなスタジアムで、フィールドが近く、とても見やすい。
試合は、マンチェスター・ユナイテッドが先制したが、前半のロスタイムにレヴァークーゼンが追い付く。
後半は、異様なくらい緊迫した試合になった。
このままだと負けてしまうユナイテッドは、とにかく点を取るために、前のめりで仕掛け続ける。それをレヴァークーゼンが必死に守る。
なんとしても点を取ってほしいと願うユナイテッドサポーターの声援。
ディフェンスする選手を全力で鼓舞するレヴァークーゼンサポーターの声援。
両サポーターの悲痛な唸りと叫びとどよめきがスタジアム内にこだまし、騒然となっている。
試合終了のホイッスルが鳴った。1対1。
マンチェスター・ユナイテッドは力尽き、アウェイゴールの差でレヴァークーゼンが決勝進出。
観客席ですぐにお祭り騒ぎが始まった。周りのドイツ人たちは総立ちとなって、フィールドに残っている自チーム選手に手を振り、フラッグやマフラーを振り回し、音楽に合わせて踊っている。
私は、そうした熱狂からこっそり抜け出すかのようにスタジアムを後にした。
この歓喜の陶酔は彼らの物だ。彼らだけがその特権を享受することが出来る。
部外者の私に出来ることと言ったら、この場に居させていただき、素晴らしい試合と素晴らしい光景を見せてもらったことに感謝することだけ。
レヴァークーゼンのサポーターたちは、その日はきっと夜遅くまで飲み、騒ぎ、勝利の美酒に酔ったことだろう。
一方、たくさんのユナイテッドサポが泊まった私のホテルは、騒々しさとは無縁の静かな宵となり、おかげで安らかに眠ることが出来ました(笑)。