クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

フェストターゲへの道

ベルリンが誇る二つの歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ(DOB)とベルリン州立歌劇場が、かつてそれぞれにおける来日公演、つまり日本で、ワーグナー畢生の大作「ニーベルングの指環」四部作の連続チクルス上演を行っている。
これらは画期的な出来事だった。日本におけるリング上演史の中で、ベルリンの劇場が果たした功績は大きい。

私の場合、1987年のベルリン・ドイツ・オペラ公演は行かなかったので、2002年1月から2月にかけて行われたベルリン州立歌劇場来日公演の鑑賞こそが、自身初めてのリング体験であった。(※期間内にまとまって開催された連続通し上演という意味で)

実は、この2002年というのは、「日本の」だとか「私自身の」とかいったちっぽけな枠を超越した、全世界のワーグナー上演史に燦然と輝く一大プロジェクトがベルリンで行われたことをご存知であろうか。

ワーグナー全歌劇・楽劇作品(初期の一部作品を除く)の一挙連続上演。
これをベルリン州立歌劇場がやってのけた。

同劇場が主催するイースター音楽祭「フェストターゲ」で、3月24日から4月28日にかけての1か月間内に、リング四部作を含む10作品の上演を2サイクル行うというもの。
すべての演奏を一人の指揮者の下で行い、すべてのプロダクションを一人の演出家が担った。
前代未聞、全世界のクラシック音楽ファンやワグネリアン、関係者たちがあっと驚いた企画である。

それは、まさに指揮者がバレンボイムだったからこそ実現したプロジェクトであり、バレンボイムでなければ成し得なかった偉業であった。
1992年に音楽監督に就任してから10年という節目の年。1996年にはフェストターゲを創設し、歌劇場の実力と知名度を世界トップ級へと引き上げたバレンボイム。劇場と指揮者と演出家クプファーとの強力なタッグは絶頂期を迎え、プロジェクトは最高の結実のシンボルと言えるものだった。

こうしてみると、1月に行われた来日公演のリング上演は、ベルリンの本番前のいわば格好の予行演習だったと言えるだろう。

リング来日公演のチケットを手に入れた私は思った。
その勢いのまま「ベルリンにも行きてえー」と。続きを現地で体験したいと。
当時、まだバイロイト遠征を果たしていなかったこともあり、この‘もう一つの’ワーグナー祭りは、殊のほか魅力的に写った。

フェスティバルの終盤、4月末頃なら、なんとかゴールデン・ウィークに引っ掛けて行くことが出来るかもしれない。
さっそく公演スケジュールを調べると、4月26日が「トリスタンとイゾルデ」、27日が「ニュルンベルクのマイスタージンガー」、28日が「パルジファル」(全チクルス最終日)だった。

いいラインナップではないか。
よし! この3つ、行こう! 決めた!

こうして鑑賞計画、旅行計画を着々と練っていたら、更なるスペシャルイベントをそこに付け加えられそうなことが分かってきた。

一つが「ベルリン・フィル クラウディオ・アバド音楽監督退任記念公演」。

もう一つが「UEFAチャンピオンズリーグ準決勝2試合」。

もしかしたら、これはすごい旅行になるかもしれない・・・。

胸の鼓動の高鳴りを抑えることが出来なかった。