クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

初ヨーロッパへの道1

今から遙か昔、30年以上も前のこと。
社会人一年生の私は、新卒社員の誰もが経験する駆け出しの壁にぶち当たり、悪戦苦闘で悶々としていた。

くそー、仕事がうまく行かない・・・。思うように結果が出ない・・・。

ルーキーが直面するこうした悩みは、精神的に重くのしかかり、やがてストレスとなって、じわじわと溜まっていった。
この壁は、もちろん自力で乗り越えなければならないものだ。とにかく頑張るしかない。
自分なりに一生懸命努力はしたが、その一方で、溜まっていくストレスだけは、どこかで思い切り発散したかった。

手っ取り早い方法がある。それは、スパッと旅行にでも出かけ、一時期だけでも自分の身を仕事から開放することだ。

「海外旅行に行きてえ・・・」

会社に入る前に、青春の思い出作りとして海外へと卒業旅行に出かける大学生は当時からいたし、自分の友人たちも次々と出掛けて行ったが、私はやむを得ない事情により、行くことが出来なかった。そういう意味でも、行きたいと思った。

入社して半年が経った秋の頃、「よし、来年の夏休みに海外に行こう!」と思い立ったのは、こうした状況からだった。楽しい予定が目の前にぶら下がれば、張り合いになり、仕事も頑張れるってわけだ。

行きたい場所があった。美しいスイス・アルプスの景観が憧憬だった。
スイスに行きたい。アルプスリゾートに滞在したい。ハイキングをし、展望台のテラスから絶景の山々を眺め、思い切り羽根を伸ばしたい・・。
いや待てよ。
どうせスイスに行くのなら、隣国のオーストリアにだって足を延ばせるよな。
ザルツブルク、ウィーン・・・。そこは、音楽好きにとって憧れの場所であり、聖地ではないか。

こうして、夢が少しずつ形になっていき、実現の方向へと動いていく。

一緒に行ってくれる相棒も見つかった。幼なじみで親友のOくんだ。
彼はとてもいいヤツだ。せっかくの海外旅行である。「どこに行きたい、あそこに行きたい」という希望、我が儘の一つや二つ、出てきて当然だろう。
でも、Oくんは私が提案する計画に、「それでいいよ!」と返事をしてくれた。長年の付き合いの中でも、お互いの意見が衝突することはほとんどなし。気心の知れた友人というのはありがたいものだ。

二人とも海外旅行の経験は未熟だが、だからといって、いわゆる団体ツアーに参加するつもりは1ミリもなかった。

実は私は、この時海外は初めてではなく、それ以前に、大学の音楽サークル、管弦楽部の演奏旅行で、東南アジアツアーに行ったことがあった。その時、団体旅行がいかに窮屈なものなのか、イヤというほど味わった。
自由行動は制限され、たまにフリータイムが設けられても「40分後にバスに再集合!」みたいに号令がかかる。
にも関わらず、そうした約束時間や決め事を守らないルーズな人間が必ずいて、みんなに迷惑を掛ける。あー、うぜえ。
行く先々でいちいちみやげ物屋に連れて行かれるのも、辟易だった。

二度とツアーなんかで行くものか。行きたい場所は自分で決め、自由気ままに旅をする。
今日まで延々脈々と続いている譲れないポリシーが、この時生まれた。

とはいえ、今の自分がやっているように「飛行機もホテルも移動手段もすべて自力手配」というのは、さすがに難しい時代だった。
これらをパッケージにした個人旅行を扱う会社に手配をお願いした。

と、ここで、ある悩ましい問題が浮上する・・・。