2020年2月3日 東京都交響楽団 東京文化会館
指揮 フランソワ・グサヴィエ・ロト
合唱 栗友会合唱団
ラモー 優雅なインドの国々組曲
ルベル バレエ音楽 四大元素
ラヴェル バレエ音楽 ダフニスとクロエ全曲
フランソワ・グサヴィエ・ロト。ちょっと冴えないおっさん顔に騙されちゃいけない。この指揮者、只者じゃない。
オーケストラの音を変貌させることが出来る。
音楽に新たな創造を植え込むことが出来る。
作品の魅力を際立たせ、作品から新しい発見を引き出すことが出来る。
いずれも簡単なことではない。卓越した指揮者のみが成し得る奏功だ。
エレガントなタクトで流れを作っているわけでもない。
情熱的に力を込めてグイグイ引っ張っているわけでもない。
カリスマ性に物を言わせてオケ奏者を従わせているわけでもない。
おそらくやっていることは、リハの段階で、音楽を丁寧に一から構築させていく作業だろう。
その際、指揮者が捉えた作品のあるべき姿と方向性が、明確に提示されているはずだ。
これだけオーケストラの音が鮮やかに変容しているのである。奏者は間違いなくインスパイアされている。
実際、どういうリハを行っているのか、ものすごく興味があるが、目からウロコが落ちるような指摘で奏者をハッとさせているのではなかろうか。
こういうのを我々はつい「魔法」と言いたくなるが、ロトからすれば、一言でそんな簡単に済まされるのは心外かもしれない。もっと具体的なものであり、ロジカルなものであり、緻密なビルドアップであるはずだ。
プログラムが前半と後半両方とも魅力的で、同等に輝いていたというのも称賛に値する。
大抵のコンサートにおいて、後半プログラムがメインとなり、そちらに重点が置かれる。私の鑑賞記事も、感想が前半プロを無視してメインのみ、という公演も珍しくない。
本公演の前半プロが魅力的だったのは、ロトが創設した「レ・シエクル」というオケとのコンビによる古楽演奏の功績そのもの。ならば、プログラム全体を古楽の統一様式で整えてもいいところ。
そこを、後半、一転して時代の異なるラヴェルの煌めきで唸らせる。
ロトの懐の大きさ感じずにはいられない。
でも、よく見てみれば、本公演はちゃんと考え抜かれた統一のテーマで整っているのだ。
「フランス人指揮者による、フランス舞曲の時代変遷の考察」
フランソワ・グサヴィエ・ロト。この指揮者、やっぱり只者じゃない。