クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

フランスのストライキ

フランス政府による年金改革を発端とした同国のゼネラル・ストライキは、こちらに伝わるニュースを見る限りにおいて、泥沼混迷の様相を呈している。香港のような暴動騒ぎにはなっていないみたいだが、過去には暴動騒ぎが起きたこともあり、予断を許さない。少なくとも、公共交通機関などの社会インフラが麻痺し、一向に収まる気配が見えない状況のようだ。

そして、パリ国立オペラ座の労働組合も、ご多分に漏れずこれに加わり、公演が次々とキャンセルに見舞われているという。

やれやれまたかよ・・。なんだかなあ・・。

こうしたニュースが日本で報道されるたびに、ネットのコメントなどでは、フランス労働者の行動に理解を示す意見を目にすることが多い。「法で認められた正当な権利なのだから、当然のこと。尊重する。」みたいな。
それどころか、「さすがはフランス革命を成し遂げた国。権利を勝ち取るために国民が立ち上がる姿は、勇敢で素晴らしい!」みたいに持ち上げ、称賛するコメントも。

本当にそう思っているのだろうか。「所詮は対岸の火事だから」ではないのだろうか。
そういう人たちが、仮に日本で交通機関がストップするなどして、大切な用事が吹っ飛んだり、日常生活に不便を強いられる状況に巻き込まれた時、同じセリフを抜かすことが出来るのか、確かめたい気がするけどな。

過去に旅行中、ストライキに遭遇し、移動の手段を奪われたり、楽しみにしていた公演が中止になってしまったり、といったシャレにならない迷惑を何度も被ったことがある私は、こうした行為を持ち上げることは出来ない。

フランスを始めとする欧州のストライキに関して、私はこれまでにもブログ記事で持論を述べてきた。今回の記事は、同じことの繰り返しになってしまう。
それでも、何度でも言わせてもらう。声を大にして。
「なんて未熟な社会なんだ!」と。

要求を勝ち取る手段として、人に迷惑をかける。
人に迷惑をかけることで、要求を認めさせようとする。
私は、たとえこれが法で認められた正当な権利であったとしても、そうやって要求を通そうとする社会のあり方やエゴイスティックな民意に対し、見下しの目を向ける。

日本でこうした大規模なストライキが起こらないのはなぜか。
社会が混乱しないように、人に迷惑がかからないように、労使間でとことん協議するからだ。労使双方が、最悪の結果になることを回避するために、妥結を目指して最後の最後ぎりぎりまで話し合うからだ。
また、政策の是非については、国会における討論と議決があり、そして民意を問うための選挙がある。政治家は、自分たちが選び、託した代表者なのだ。
そうした社会システム、法治国家としてのシステムを機能させようとせず、なぜ、毎度毎度、感情に任せたストライキに安易に走ろうとするのか。

私に言わせれば、結局それは「社会が未熟だから」の一言に尽きる。

今回のフランスの年金改革。
少子高齢化が進む日本でも似たりよったりの状況であることを踏まえれば、フランス政府がやろうとしていることは、察しが付く。
このままでは将来にわたって安定した年金財源が確保できない。将来破綻しないように、今改革を施す必要があるのだと思う。

だが、奴らはそんなことは眼中にない。自分たちの年金が減らされたり、支給年齢が繰り下がったりするのは嫌だ、反対だ、そういう理由だけで、ストライキという手段に打って出る。
オマエらに問いたい。
そうやって不満を示したら、年金財源は改善されるのか?
ストライキをやれば、打ち出の小槌が出てくるのか?
本当にやるべきことは、安定的な年金財源を確保するためにどうしたらいいか、徹底的に政策論議することではないのか?

私が「社会が未熟」と断じるのは、つまりそういうことだ。

フランスの年金システムは、現状では、それぞれの業種管理組合ごとに運用され、支給要件もそれぞれで決まっているとのこと。これを政府は一本化しようと目論んでいるようだ。
パリ国立オペラ座のバレエ団が所属する組合では、今、45歳くらいで年金が支給されるらしい。これが一本化されると、支給年齢が65歳くらいにまで引き下げられる。

これに猛反対するバレエ組合所属ダンサーのコメントが次のとおりだ。
「我々は65歳まで踊り続けることはできないのだ!!」

本当に驚きと失笑を禁じえない。
踊り続けられないのなら、次の人生のステップを探せ。それしか道はない。
指導者・教育者の道、劇場スタッフへの道、マネージャーへの道、評論家への道・・・。
もし、そうした芸術分野に残れないのなら、諦め、心機一転、違う仕事を探す。
ほとんどの人が、そうやって世の中を渡り歩いている。当たり前のことじゃないのか?

結論。
あのさー、ほんっとどうでもいいんだけどさ、人に迷惑をかけるのだけは、やめてよね。公演中止にするの、勘弁してよね。