クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2019/12/6 ミュンヘン

今年の10月、ミュンヘンの「サロメ」鑑賞記を綴った前回のブログ旅行記は、最後に次の予告を添えて、書き終えた。
「次回は12月、ミュンヘン。続きがある、というわけだ。」

そのとおり、またミュンヘンにやって来た。
キリル・ペトレンコバイエルン州立歌劇場音楽監督の任期最終年度。この素晴らしい指揮者がオペラを振る機会、残り少ないチャンスを、できる限り物にしたいという衝動が、そこにある。
演目はコルンゴルトの「死の都」。新演出上演である。

最大の問題は、チケットが取れるかどうか、だった。
ペトレンコが振るオペラ、というだけでなく、そこに「稀代のスター歌手、ヨナス・カウフマンの出演」が加わっているのだ。彼が出演する、ただそれだけで、その公演の価値が上昇し、チケットがプラチナ化する。

私は、「通常方法では取れないかもしれない」と、覚悟した。
かつて、この劇場でカウフマンが出演したオペラのチケットを買おうとして、一般発売が開始されたその瞬間にソールドアウト表示が飛び出てきたのを見て、呆然絶句したことがあった。
とりあえず通常方法で申し込んでみる。申し込んでみるが、どうしても駄目だったら、その時は最高級ホテルのコンシェルジュに頼もう。
そう考え、私はミュンヘンの老舗の5つ星ホテル「バイエリッシャーホーフ」を予約した。正確に言えば、高級ホテルといつものランクのホテルの2つを同時予約した。運良く自力で取れれば、その時は高級ホテルの方を速攻でキャンセルすればいい。ただそれだけだ。

チケットは、なんと、運良く通常方法(先行抽選)で取れてしまった。
意外だった。「嬉しかった! ラッキー!」というより、「あらら、取れちゃったのね?」という驚きの方が大きかった。

ならば、最高級ホテルに泊まる必要性はなくなる。キャンセル、ということだ。
その時だった。
欲望の感情が突然沸騰した。
「クソー、バイエリッシャーホーフに泊まりてぇ~・・最高級ホテルに泊まりてえ・・」

オレだって、たまには贅沢したい。たまには最高級ホテルに泊まりたいさ。
金がまったくないわけじゃない。ただ、なるべくたくさんコンサートに行けるように、たくさん海外に行けるように、普段はいろいろと節約しているのだ。
でも、いいじゃないか、たまには。自分へのご褒美があって、何が悪い?

決めた。私はバイエリッシャーホーフに泊まることに決めた。
一泊350ユーロ(約4万円)は普段の私の予算の3~4泊分相当で、貧乏性が染み付いている自分にとっては「ひぇ~~!!」だが、「オレだって、いざとなったら貴族になれるんだ」と言い聞かせた。

これは、こんな自分もささやかながら持っているプライドの確認作業みたいなものだった。たくさん海外に行っているおかげでどんどんと貯まっていくマイレージを使い、10回に1回くらいアップグレードしてビジネスクラスに乗る。そうやって自分を癒やし、錆びつく自分のプライドを時々磨いてやる。つまり、それだった。

午前9時20分、ミュンヘンに到着、ホテルに到着。ドアマンが、さっと回転扉を回してくれる。
受付にて。
いつもなら「ハイハイ。チェックインは午後◯時からです。お荷物を預かりますので、また午後に来てください。」となる。
「バイエリッシャーホーフにようこそ!」
笑顔で迎えてくれレセプションのお姉さんが、聞いてきた。
「今すぐチェックインしたいですか? もしそうなら、すぐにお調べし、部屋を整えますが。」
「ええ。できれば。」
タタタンとパソコンのキーボードを打ち、サッと内線電話を掛けると、あっという間に鍵が渡された。「手荷物をポーターに運ばせましょうか?」
「あっ、あの・・いえ、大丈夫です、結構です。」
「滞在をお楽しみくださいね。質問やご要望がありましたら、何なりとお申し付けください。」

こうした気の利くやりとりの一つ一つが、高い宿泊代の中に含まれている、というわけだ。

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部屋に入り、大理石のバスタブに熱いお湯を貯め、長旅の疲れを取る。このまま休んで寝てしまいたかったが、まだ午前中なので、やっぱり観光に出かけることにする。

出かけたのは、バイエルン州立エジプト美術収集館。
エジプト美術に興味があるのかって??
ないっ。(きっぱり)
ただね、これまでもブログ記事に何度も書いているが、ミュンヘン観光なんて、もう行き尽くしている。訪れるのが2回目、3回目、4回目、なんて場所も多い。
この博物館もかつて一度訪れているが、その時はまだレジデンス宮殿の建物の一角にあった。いつの間にか現在の場所に引っ越して、新しい建物になっていた。そういう意味では、初めて訪れる場所だったのだ。

興味がない、と言ったが、それでも数千年前の骨董展示品を眺めると、悠久の歴史をひしひしと感じる。訪れれば訪れたなりに、何かが心に残るものだ。

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昼食を取り、ホテルに戻って、今度こそ優雅な一休み。どうやら、万全の体制でオペラに臨めそうだ。