クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

思い出の「ばらの騎士」

 新日フィルのレビューから、ばらの騎士の話題が続いてスミマセン。

初めて生でこのオペラを見たのは1993年、国内上演ではなくニューヨークのメトだった。指揮者は知らない人だった。ブログラムには「メトのデビュー」と書かれてあった。
 そんな知らない指揮者よりも私が楽しみにしていたのは、当時は非常に人気が高かったフレデリカ・フォン・シュターデ(オクタヴィアン)、キャスリーン・バトルゾフィー)というアメリカが生んだスター歌手だ。

 ところが、なんと、NYに行ってみたら揃いも揃ってキャストが変わっていてガッカリした。ドタキャンだったのか、規定通りのキャストだったのかは分からない。元々こちらが単に第一キャストの情報しか得ていなかった可能性もある。なにせ当時は今ほど情報が詳細かつ簡単に得られるわけではなかったから。

オペラファンなら、楽しみにしていた歌手が落っこちてキャストが変わってしまうことほどがっくりすることはないということを理解してもらえると思う。がっかりして「あ~あ」という気持ちで公演を見ても感動は得られない。というわけで17年前のその公演は、徐々に自分の記憶から薄れつつあった。

 年月が経って、たまたま偶然当時のプログラムを見返したところびっくり仰天した。その時メトデビューを果たした無名の指揮者、それはなんとクリスティアンティーレマンだったのだ!
 そして、当時あれだけ人気のあったアメリカのスター歌手お二人は、今、どこに行ってしまったのか・・・。


ばらの騎士の上演と言えば、やはり伝説のC・クライバーウィーン国立歌劇場東京公演について触れないわけにはいかない。

 自分にとって、「ばら」の一発目が上に書いたメトだったが、クライバーが二発目だった。1994年10月。当時としては破格のS席6万5千円が飛ぶように売れたということでマスコミを賑わした。

 もちろん、カリスマにして生ける伝説(であった)指揮者クライバーがウィーンと組んで日本に来るのなら6万5千円は高くないと思う。クラシックの公演は一期一会だ。あとで「聴いておけば良かった」なんて後悔したって遅いのだ。もしその感動が一生残るのならむしろ安いってもんだ。というわけで、こちらの期待のボルテージをすさまじく高騰させて公演に臨んだ。

 私がイメージしていたクライバーのばらは、「血管の中の血が逆流するかのような沸騰し燃え上がる官能のるつぼ」であった。ところがそのイメージは覆された。クライバーのばらは、「美しく、はかなく、そして美しく」であった。オケを煽るのではなく、歌手にぴったり寄り添い、極上のピアニッシモで支えていた。それはそれで素晴らしかったが、私が勝手に(それこそ勝手に)イメージしたものと違っていたために、「あれれ??」という感じだった。

 この公演を体験できたことはそりゃ自慢にはなるかもしれない。だけど同様に公演を体験した人たちが興奮気味に「伝説の公演!」「最も素晴らしかった公演!」となどと褒め称えるのを聞くと、「いや~、ホントそうだね、素晴らしかったね!」と素直にうなずくことが出来ない。ほんの少し悲しい、微妙な公演であった。