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2009/3/1 ウィーン放響

2009年3月1日 ウィーン放送交響楽団 東京オペラシティホール
指揮 ドミトリー・キタエンコ
ヘルベルト・シュフ(ピアノ)
グリンカ ルスランとリュドミラ序曲
チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番
チャイコフスキー 交響曲第4番


 独奏者のヘルベルト・シュフは打鍵が強く(かといって決して力任せではなく)、硬質な音色でダイナミックなコンチェルトを奏でた。色彩豊かなオーケストレーションに負けまいと、ややもすると‘格闘’してしまう奏者を時々見かけるが、シュフはキタエンコの好サポートを得てうまくオーケストラに乗っかっていた。結果としてスケールの大きな音楽が出来上がった。良かったと思う。

 メインのチャイ4。
 一緒に聴いた友人O君は「The・名演 パート2だね!」と、公演に大満足の様子。私も異論無し。ただ、全体的に感銘を受けつつ、演奏中は結構色々なことを考えていた。

 まず、オケの力量であるが、機動力があり個々のテクニックもあって確かにうまい。だが、ウィーンフィルのような独特の芳醇な香りがしない。誰が振ってもウィーンの伝統をかたくなに守って独特の香りを放つWPO、かたやウィーン訛りを消して透明な機能美を備えるORF。良い悪いの問題ではないのだが、もう少し強烈な個性を打ち出さない限り「ウィーンの3番目のオーケストラ」というレッテルはそう簡単には剥がせないのだろうな、と思った。

 次に頭に浮かんだのは、指揮者キタエンコの音楽。
 全体的に大きな流れを汲みつつも、ところどころでキタエンコならではの独特の仕掛けが放たれ、それがなかなか面白く、演奏中に思わずニヤっとすることが多々あった。
 で、考えていたのは、「果たして、このキタエンコのチャイコはロシアの伝統に沿った本流なのか?」ということだ。

 多分、違う、と思った。

 長くモスクワフィルの監督を務めた人であるが、だからといって「これぞロシアの荒涼大地!」という演奏を勝手に追い求める必要もない。キタエンコはあくまでもキタエンコ。彼の個性溢れる‘キタエンコのチャイ4’を聴くことが出来た。それで満足だ。


 ところで、上に、「ウィーン訛りの無い透明な機能美のORF」と書いた。ところがアンコールで、「当然チャイコか何かのロシア小品」が来るかと思いきや、意表を突いてJ・シュトラウスポルカが来た。途端に会場がヴィーナリッシュ、ウィーン気質に染まった。キタエンコも聴衆に手拍子を求めたり、かけ声を発生させたり、とノリノリだ。

 例え‘3番目’のオケであろうと、指揮者が個性的なロシア人であろうと、「ウィーンはウィーン!!」なのだ。これこそが「世界中を魅了し、訪れる人を虜にさせるウィーン」なのだ。