クラシック、オペラの粋を極める!

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2009/2/17 大阪フィル

2009年2月17日 大阪フィル東京公演 サントリーホール
指揮 大植英次
ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ(ピアノ)
モーツァルト ピアノ協奏曲第9番ジュノム
マーラー 交響曲第5番


 ピアノのソリスト、ヌーブルジェはモーツァルトを聴く限りにおいて特筆すべきものは感じなかった。ただし、大植の好サポートもあって大変心地よいコンチェルトであった。

 ビックリしたのはアンコールのドビュッシー「月の光」だった。一音一音が瑞々しく、わずか5分ほどの小品が、まるで魔法がかかったかのように昇華した。信じられないくらい美しいドビュッシーモーツァルトでは飛ばなかったブラボーがアンコールで飛んだ。フランス人が奏でるフランスのエスプリとはこういうものなのか。


 メインのマラ5。ビックリするくらい遅っっ!一時間半たっぷりかかった。

 遅いのが悪いと言っているわけではない。大植は大いなる確信を持ってテンポをゆっくりにしている。まるでスコアを顕微鏡で覗いているかのようだ。

 そこで見えてくるものが確かにあった。特に第一楽章は本物の葬送行進曲だった。マーラーが描きたかった‘沈痛’がはっきり見えた。

 テンポだけではない。マーラー特有のはじけるようなオーケストレーションを力任せに爆発させることなく、節度を持たせ、こらえさせている。金管の最強音に隠れてこれまで聞こえてこなかった木管や弦楽器のメロディーがはっきりと浮上し、こんな旋律があったのかという発見があった。

 それでも、この大植のマーラーは賛否両論だろう。特に、圧倒的にゆっくりのテンポを否定し、拒絶する人は多いだろう。
 私は、というと、自分の好みの演奏スタイルと違うからといって、勝手に駄演と決めつけることも切り捨てることもしない。

 ただ、今回については、そうはいっても途中から終演時間が気になりだした。帰宅時間が遅くなるからだ。同じように気になって仕方ない聴衆はたくさんいて、演奏中に腕時計に目をやる人も多く、終了と同時に席を立って帰路に向かう人がいた。カーテンコール中もバラバラと退散する人が目立った。私もその中の一人だ。
 なんと、その後に更にアンコールを演奏し、大植氏は終演後にサイン会も行ったとのことだ。平日の夜のコンサート、ちょっと勘弁して欲しいと思った。

 自己の音楽を表現するのは自由だ。しかし、自己満足であってはならない。公演である以上、聴衆との
コミュニケーションが大事なのだ。大植氏ほどの指揮者ならばそれくらい分かっていると思うのであるが・・・。